「えっ誰?!」

 あやかし? それとも猛獣とかそういう類? えっ怖い!
 九字を切ろうにも手が震えてうまく動かない。ど、どうしたらいいんだろう……。

「行ったか。おい、大丈夫か?」
「へ」

 目の前に現れたのは、上半身裸の青年だった。黒い髪に切れ長だけど少し幼さも感じる青い瞳と、若干色黒な肌と見事なシックスパック。下半身は灰色なだぼっとしたズボン? みたいなのを履いていてぱっと見は漁師というか、ちょっとガテン系というかそんな感じに見える。
 ん? どっかで見た事あるような。

「アンタ、一部始終見てたけどここに島流しにされてきたんだろ。ほら、早く身体を温めないと風邪ひいて死ぬぞ。俺の拠点で良いなら連れてってやる」

 彼が私に近づいて、寒さなのか恐怖なのかわからないままに震えている腕を掴んだ。

「あ、ま、まさか……? あなたもしかして海坊主ですか?」
「ん? そうだが?」