あるところに少女がいた。
月夜に照らされると、その身は白く輝き、艶のある髪は靡き、誰もが目を奪われてしまうような少女だ。たいそう可憐で、華奢で、強い風が吹いてしまえば散ってしまいそうな雰囲気を纏う少女。
けれど、その顔に笑みが浮かぶことはなく、常に月を見据えている。
皆月(みなづき)家の一角の、監獄のような狭い部屋から。
それは間違いなく、この狭い村の中で一番美しい少女だと言えるだろう。
しかし、村のものは少女のことを知らない。名はもちろん、その身が存在していることも知らない。
少女の存在を知っているのは、皆月家の一部のものだけだ。
だって少女は日光病なのだから。
一度たりだって、陽の元を歩いたことのない、歩くことが出来ない病に侵されているのだから。