⬛︎ 2024年11月16日(土)午後1時〜
千葉県浦安市内にある絹谷宅
いらっしゃい、ちひろちゃん。
大人っぽくなったね。元気にしてた? ……ふふっ。そっか、よかった。
私はね、いまは私立の高校で国語教えてるの。もう教師やるつもりなかったんだけど、知り合いの先生からお願いされちゃって断れなくって……でも、なんだかんだ楽しめてるよ。
そうだ。飲み物、何飲みたい? えっ、コーヒー? ……へぇ、飲めるようになったんだ。本当、大人になっちゃったね。
花恵ちゃんも、きっと素敵な女性になるはずだった。
ほら、あの子、妙に大人びてたでしょう? 花恵ちゃんといるとね、教師と生徒っていう関係性を忘れちゃって、ついつい会話を楽しんじゃうの。友達と話してるみたいに。
……申し訳ないんだけど、彼女が自ら命を絶ってしまった理由は、私にもわからない。たとえ知っていたとしても、話せることはないと思う。
じゃあなんで今日会ってくれたのかって? そんなの決まってるじゃない。ちひろちゃんに会いたかったからだよ。
えっ……?
あぁ……その話なら、私も生徒から聞いたことがあるけど、ただの噂じゃない?
あっ――でも、ひとつだけ気になることはあったかな。
文化祭の時にね、看板とか飾りとかを取りに地下に降りることがあったんだけど、だいたい行事関連の物って地下一階の方に置いてあるの。でも私、間違えて地下二階の方まで降りちゃって……。
エレベーター開いた瞬間、思わず声出ちゃった。
そこにはね――廊下に敷き詰められるように、ベッドが並べられてあったの。
ほら、病床で使われるような、キャスター付きの。