皆さま、お久しぶりです。雨谷ちひろです。
 空白の三十八年についての調査を開始してから、約一か月が経とうとしています。予告していた通り、調査に少々時間がかかってしまいましたが、ここで収集した情報をもとにいろいろと整理していきたいと思います。

 はじめに、人気Youtuberの動画から抜粋した文字起こしは、ご覧いただけたでしょうか?
 情報提供をいただき、初めてあの動画を視聴した時、████商業高等学校のことだとすぐにわかりました。動画内で話されている建て替え工事の時期と、地上十階建てのRC造という点が合致していたからです。
 動画の中では、工事現場での怪奇現象と、その現場で発生した作業員転落死亡事故について語られていました。
 まずは、工事現場での怪奇現象について、【村上純子(1964年度卒業生)へのインタビュー】と照らし合わせて話を整理していきましょう。ちなみに、村上さんは私が働く書店の常連様です。私が通っていた高校の大先輩だということは、今回の調査を機に初めて知りました。

 村上さんの話によると、空白の三十八年の間で「学校が病院として機能していた時期はあった」とのことでした。とは言え、学校運営が再開した一九四六年は、ちょうど村上さんが生まれた年です。村上さんは、この話を実のお母様から聞いたとおっしゃっていました。かなり昔の話のため確実とは言えませんが、信憑性はあると考えています。当時の時代背景を鑑みても、村上さんの話は十分に現実味があるのです。
 終戦間近、空襲の本格化によって集団疎開が実施されるようになり、学校としての機能を失った校舎は、病院や役所、軍事施設に転用されるケースが多々ありました。████商業高等学校(当時は████実業補習学校)は、校舎焼失により学校運営が停止され、新たに校舎が再建されるも、終戦まで運営が再開されることはありませんでした。集団疎開により使われなくなった校舎のように、████商業高等学校もまた、別の機能に転用されていたと考えておかしくありません。また、工事現場での怪奇現象の発信源とされている埋め戻した地下室が、戦時中に遺体安置所として使用されていたのであれば、「地下から声が聞こえてくる」という作業員たちの話も、筋が通っているように思えますよね。

 次に、作業員転落死亡事故についてです。母校の校舎の建て替え工事中に死亡事故が発生していたということは、動画で初めて知りました。作業員の方のご冥福をお祈りします。
 今回の調査で、十階部分から落下して亡くなったのが、鹿倉花恵さんの前にも一人いたということがわかりました。
 私は、このモキュメンタリーホラーを書いている中で不思議に思っていたことが一つあります。

 それは、実咲先生が目にした大量のベッドや、工事現場での怪奇現象――どれも地下での話なのに、連続不自然死については地下からだいぶ離れた上層階に関する話しかなかったことです。

 いろいろと調べていくうちに、自然と意識が地下の方に向いてしまっていましたが、本来は実態がある上層階に目を向けなければいけなかったのです。実際に発生した転落事故と、鹿倉花恵の飛び降り自殺は上層階での出来事です。
 もしかしたら、「怪異的な何かが件の連続不自然死に関わっている」という仮説の中の「怪異的な何か」は、転落死した作業員の存在なのかもしれません。

 今後は、地下の怪異ではなく、上層階の実態にフォーカスし、調査を進めていきたいと思います。

 最後に――何か情報をお持ちの方がいらっしゃいましたら、メール又はXのDMでも情報提供お願いします。
 Xのアカウント→@amgi_chr_

 引き続き、『████商業高等学校について』をよろしくお願いいたします。