1、恋しい君に会いたかった ――大伴坂上郎女(おおとものさかのうえのいらつめ)の恋



✦1000年後も君に会いたい


このころは千年や行きも過ぎぬると我や然思ふ見まく欲りかも 巻4-686 大伴坂上郎女


もう、1000年も経ったような気持ちになるくらい、
君のことを私は想い続けてるんだよ。

あの日、君と久々に会って、スタバで何気ない話を重ねたから。




✦愛しい私の想いは


愛しと我が思ふ心早川の塞きに塞くともなほや崩たむ 巻4-687 大伴坂上郎女


TikTokで大量の恋愛観の情報に押し流されるように、
君のことを色々、あれこれと考えてしまうよ。

ただ、君のことが愛しすぎて、
私の心は、もう壊れそうだよ。





✦赤いセーターの裾に想いを乗せて

木綿だたみ手に取り持ちてかくだにもあれは祈ひなむ君に逢はぬかも 巻3-380 大伴坂上郎女


赤いセーターの裾をぎゅっと握ったまま、あなたに願いを込めた。
そんな私の尽きない思いは、クリスマスの雰囲気に飲まれているだけかもね。
ただ、どの人よりも、きっと、あなたのことを想っていると思うよ。

そろそろ、あなたに会いたいな。





✦うつろいやすい私は、ずっと跳ねずにいると思っていたのに

思はじと言ひてしものをはねず色の移ろひやすき我が心かも 巻4-657 大伴坂上郎女


うつろいやすい私の気持ちは、
私自身も、青を消すオレンジ色みたいに儚く思うんだ。

どうして、うつろいやすいんだろう、私は。
君と別れたあの日、
これ以上、恋をしないって決めていたはずだったのに。





✦離せない日常

出でて去なむ時しはあらむをことさらに妻恋しつつ立ちて去ぬべしや 巻4-585 大伴坂上郎女


別れ際はいつも寂しいよ。
だって、また朝になると君も私も日常に戻るんだから。





✦君を振り向かせたいよ

思へども験もなしと知るものをなにかここだく我が恋ひ渡る 巻4-658 大伴坂上郎女


何度も何度も君のことを想い続けても、
どうせ君は私のことを見てくれもしないんでしょ。
もし、制服からワンピースになったら、
君は私に、はっとしてくれる?

ねえ、どうしたら君は振り向いてくれるの?





✦どんなに噂が私たちを引き剥がしても

汝をと我を人そ放くなるいで我が君人の中言聞きこすなゆめ 巻4-660 大伴坂上郎女


教室は君と私との噂でいっぱいだよ。
もし、私と君の炎上に、スルースキル発動できたら、本物の恋だね。

だから、信じているよ。
君はありもしない私の嫌な面を信じないことを。





✦恋を置いて、日々は過ぎていく


相見ぬは幾久さにもあらなくにここだく我れは恋ひつつもあるか 巻4-666 大伴坂上郎女


会えないまま日々は過ぎていくね。

それぞれの孤独を埋めるように、
君とのタイムラインは、通話履歴の長方形と、
お互いの恋文、そして、ハートのスタンプでいっぱいになったね。

それでも会いたいよ。
いつまでも恋しさは満たされないから。




✦終わる恋に後悔しても


まそ鏡磨ぎし心を許しなば後に言ふとも験あらめやも 巻4-673 大伴坂上郎女


心を許してしまったあとに、
終わる恋を後悔しても仕方ないよね。
だって恋は、どっちかが心変わりしてしまったら、
そこでもう終わってしまうんだから。





✦終わる恋に後悔するって、本当にそうだと思う

またまつくをちこち兼ねて言は言へど逢ひて後こそ悔いにはありといへ 巻4-674 大伴坂上郎女


「ずっと一緒だよ」って言われて、
そのときは、この恋にときめいても、
この恋は終わらないと思うんだよ。

だけど一度、交わしたその約束は、
いつの間にか消えて、
相手の心変わりで後悔する日が来るんだから。




✦この都市のなかで私の秘めた想いを知るのは私だけだ


青山を横ぎる雲のいちしろく我と笑まして人に知らゆな 巻4-688 大伴坂上郎女


青々とした曇りのビル群を眺めながら、
早足の人たちの渦の中に巻き込まれながら、
私は今、君への想いを思い出して笑ってしまったよ。

この都市の中じゃ、ひとりでいるのに微笑むのなんて、
変な人だと思うけど、私はその秘めた想いを、
青信号に変わった瞬間にすっと胸の奥に戻した。





✦アクリル板で隔たれているように


海山も隔たらなくになにしかも目言をだにもここだ乏しき 巻4-689 大伴坂上郎女


君といつもの海岸公園でいつもと変わらない海を眺めている。
お互いに言葉はすくなくて、
こんなに隣同士なのに、
ポツポツと話が途切れてしまうのはどうしてだろう。

まるでアクリル板で隔たれているような恋だね。





✦遠距離と忙しさと寂しさ


常世にと我が行かなくに小金門にもの悲しらに思へりし
我が子の刀自をぬばたまの夜昼といはず思ふにし
我が身は痩せぬ嘆くにし袖さへ濡れぬかくばかりもとなし
恋ひば故郷にこの月ごろもありかつましじ       巻4-723 大伴坂上郎女



そんな絶望的な顔をしないでよ。
少し遠くに行ってすぐに戻ってくるだけだから。
ってあのとき明るく伝えたのに、君は泣いていたね。

遠距離になるのは、たしかにつらいけど、
昼も夜も、いつでも君のことを思い出すよ。

日々の忙しさと寂しさで、5キロ自然に落ちた体重と、
不安で感傷したのを隠した積み重ねたメッセージ。

デリートを連打して、耐えられないそれらの気持ちを消すには、
君に会うことしか方法がないよ。
だから、早く君に会いたい。




✦ねぐせ

朝髪の思ひ乱れてかくばかりなねが恋ふれそ夢に見えける 巻4-724 大伴坂上郎女


目覚めると君との夢が終わってしまって寂しかったよ。
さっきまで、なにかを君としていたのに、
それは朝日に溶かされ、
嘘みたいにすぐに消えてしまった。

鏡越しに、ねぐせに気がついて、ふと思ったんだ。
もはや、ほとんど夢のことを忘れてしまったけど、
きっと君と楽しいことをしてたんだろうなって。




✦アイブロウを変えたから


月立ちてただ三日月の眉根掻き日長く恋ひし君に逢へるかも 巻6-993 大伴坂上郎女


いつも前髪で隠し気味の眉を出したのは、
いままでずっと苦手だったのに、
アイブロウ変えて、少しだけ上手くいったからだよ。

久々に会う君は、そんな私の小さな変化に気がついてくれるかな。





✦春になっても、君が恋しいよ


心ぐきものにそありける春霞たなびく時に恋の繁きは 巻8-1450 大伴坂上郎女


空気が一気に春になって、凛とした空気が一気に辺りを霞(かす)ませている。

あの日の予感が埋まらなくてうっとうしいよ。

冬から惹かれている君との距離は未だに縮まらなくて。
春になっても、君が恋しいよ。




✦遠く離れた君と夢で会った


旅に去にし君しも継ぎて夢に見ゆ吾が片恋の繁ければかも 巻17-3929 大伴坂上郎女


久々に夢の中で、遠距離になった君に会えて嬉しかったよ。
君へ恋する気持ちは変わらないことを、
無意識に確認することができたみたいだね。




✦だって好きなんだもん


常人の恋ふといふよりは余りにて我は死ぬべくなりにたらずや 巻18-4080 大伴坂上郎女



世界中のどんな人よりも、あなたのこと、好きな自信があるよ。






✦恋に祈りを

ひさかたの天の原より生れ来たる神の命奥山の賢木の枝に
白香つけ木綿とり付けて斎瓮を斎ひ掘り据ゑ竹玉を繁に貫き垂れ
鹿猪じもの膝折り伏し手弱女のおすひ
取り懸けかくだにもわれは祈ひなむ君に逢はぬかも       巻3-379 大伴坂上郎女



ねえ、神様。

私だって女の子だから、
白いワンピースで着飾ったまま、しっかり座って、
凛々しく美しくお祈りします。

今すぐ会いたいほど、あの人のことが気になるんです。





✦君を忘れられない


心には忘るる日なく思へども人の言こそ繁き君にあれ  巻4-647 大伴坂上郎女



君のこと、忘れられるわけないじゃん。
君はいつも恋の噂で、いっぱいで、
私から近づけるわけないじゃん。

ただ、君への想いは募るばかりだよ。





✦君の「永遠」は薄い


はじめより長く言ひつつ頼めずはかかる思ひにあはましものか 巻4-620 大伴坂上郎女


もう、最初からさ、そんなこと言わないでよ。
「永遠」とか、「ずっと」とか、そういう言葉で、
私は少しずつ揺すられているんだよ。

君からのそんな言葉さえなければ、
こんな複雑な気持ちにならなかったのに。





✦冬の真夜中は不純で痛い


ひさかたの天の露霜置きにけり家なる人も待ち恋ひぬらむ 巻4-651 大伴坂上郎女


凍えるほど冷たい夜の駅前通りは、
ふたりの関係が不純である証明みたいだね。

君には君の、私には知らない幸せがあるんでしょ。
だったら、もう早く帰ってあげなよ。
私なんか置いて。





✦近いのに離れ離れ


人言を繁みか君の二鞘の家を隔りて恋つつをらむ 巻4-685 大伴坂上郎女


教室のなかでこんなに近い距離にいるのに、
ふたりは離れ離れだね。

2個で1つになる、シルバーネックレスとか、
1つをなくして、永遠に片方だけのペアリングとか、
そういう、噛み合わなさが、今の私たちだよね。





✦人生キャンセル界隈に飛ばさないで


今は我は死なむよ我が背生けりとも我に寄るべしと言ふといはなくに 巻4-684 大伴坂上郎女


「もう、いいよ」って言って、
その場から飛び降りたいくらい、
メンヘラ発動しちゃいそうだよ。

それだけ、恋い焦がれて、
息を吸い込んでも、君は私に近づこうともしないよね。

そんな君の所為だよ。
人生キャンセル界隈になりかけているのは。





✦大人しい恋と日常がほしいだけなのに


あらかじめ人言繁しかくしあらばしゑや我が背子奥もいかにあらめ 巻4-659 大伴坂上郎女


情報過多で刺激だらけで、傷口をさらにえぐる今は、
言葉の暴力だらけで、嫌いになりそうだよ。
炎上した祭りのあとは、また次の炎上が起きたら、
今の炎上は勝手に鎮火するよね。

私と君との恋は、今、学校のなかで炎上しているけど、
前と同じような、大人しい恋と日常に戻ることができるのかな。
私たち。





✦片思いを乗せて


片思を馬にふつまに負ほせ持て越辺に遣らば人かたはむかも 巻18-4081 大伴坂上郎女


上越新幹線の白色に揺られながら、
片思いを乗せて、今、会いに行く。

もし、君が友達以上だと私のことを、
私が君と想うのと同じように想っていたらいいのに。




✦メッセージを待ったまま日付が変わりそう


あらたまの月立つまでに来まさねば夢にし見つつ思ひそ我がせし 巻8-1620 大伴坂上郎女


君に送ったメッセージを待ったまま、
もうすぐ日付が超えてしまいそうだよ。

もし、このまま、メッセージが来なかったら、
きっと、君の夢を嫌でも見ちゃうと思う。





✦忙しい君へ


暇なみ来ざりし君にほととぎす我かく恋ふと行きて告げこそ 巻8-1498 大伴坂上郎女


君は今日も忙しいんだね。
社会ってどうして、恋する時間すら与えてくれないんだろう。

先月から君が忙しくなって、
私は君を支えたい気持ちが強くなったよ。
だから、次に君に会うとき、そう伝えよう。




✦絶え間なく



うち渡す竹田の原に鳴く鶴の間なく時なし我が恋ふらくは 巻4-760 大伴坂上郎女



広い体育館のなかで、
ひとりぼっちで君への気持ちを叫ぶほど、
絶え間なく、虚しい感じだと思うんだ。

君のことが恋しいよ。




✦私は本気だよ


外に居て恋ひつつあらずは君が家の池に住むとふ鴨にあらましを 巻4-726 大伴坂上郎女


君の隣で私は慕い続けるよ。
だって、君のこと、私は本気で想っているから。





✦せっかく夏が来たのに


夏の野の繁みに咲ける姫百合の知らえぬ恋は苦しきものぞ 大伴坂上郎女巻8-1500


せっかく夏が来て、ゆりも綺麗に咲いているのに、
今も私は、君のことしか考えられないよ。
そんな私の陰った恋心なんて、
振った君はきっと、知らないだろうね。





✦春風で揺れる


朝戸出の君が姿をよく見ずて長き春日を恋ひや暮らさむ 大伴坂上郎女10-1925


昨日の夜を超えても、一緒にいたい気持ちは変わらないよ。
だから、今、君がいないベッドを整え終え、
開けっ放しにした窓からの春風で
レースの白いカーテンが揺れているのが、
普通に虚しく思えるね。






2,この恋を永遠にセンチメンタルにしたい




★エモーショナルな君を忘れられない


さにつらふ妹を思ふと霞立つ春日もくれに恋ひ渡るかも 10ー1911 作者不詳


君のことを思い出すと、なぜか頬を赤くして照れている君の姿なんだ。




★雨の中、君を追いかけて


我が背子に恋ひてすべなみ春雨の降る別知らず出でて来しかも 10ー1915 作者不詳


雨が降る中、君を追って、学校の玄関を飛び出した。
私はどうしても君への想いを今、伝えたくなって、
ふたりきりの教室でのやりとりを頭の中で再生しながら、
濡れ始めながら、君を呼び止めた。

ビニール傘を持った君に溢れた想いを伝えると、
君は微笑んで、びしょ濡れの私を傘の中に入れてくれた。
優しいよね、君って。





★2年もやり取りなんてしてないのに


立ちしなふ君が姿を忘れずは世の限りにや恋ひ渡りなむ   巻20-4441 郡司妻女


友達以上恋人未満だと思っていたけど、
今、冷静に考えると、私は君のことが好きだったんだって思うよ。

だって、なんで君と2年もやり取りしてないのに、
不意に、夕日に照らされてバスを待っている君の立ち姿を思い出してしまうんだろう。

君は別な人と付き合い始めたのは噂で聞いたよ。
だから、私は素直に君に好きだってことを、
あのとき、伝えればよかったんだ。




★ひとりぼっちで


君に恋ひいたもすべなみ奈良山の小松が下に立ち嘆くかも   巻4-593 笠女郎


遠距離の君が恋しい。
久々に会おうって君が言い出したのに、
当日になって、熱出すなんてあんまりだよ。

だから、私はひとりぼっちで、
ナイター営業の生駒山上遊園地に行くことにしたよ。
夜の山から、青白い大阪の夜景を眺めて、
寂しさを感じながら、そっと、君の熱が冷めることを願った。






★優しすぎる君に切なくなる


夕されば物思増さる見し人の言問ふ姿面影にして 巻4-602 笠女郎



夕暮れの中、制服姿でひとりきりでいると、少しだけ虚しくなるよ。
スカートの裾が風で揺れたから、振り向いてみたけど、
君なんていなくて、あのとき君がかけてくれた優しい言葉を思い出して、
より勝手に切なくなっちゃうよ。

君との恋は、私にとっては一方通行で苦しいよ。





★過去に鍵をかけて


家にありし櫃にかぎ刺し蔵めてし恋の奴のつかみかかりて   巻16-3816 穂積皇子


私の胸の中のジュエリーケースに飾ったままの、
キラキラした君との過去に鍵をかけて閉じ込めたはずなのに、
おそろいだったイエローゴールドのネックレスが未だに捨てられないよ。




★雪ではしゃぐ君が好き


わが背子と二人見ませば幾許かこの降る雪の嬉しからまし    巻8-1658 光明皇后


梅小路公園のクリスマスツリーは電球色と白に染まっていて、
「雪って最高だね」って言いあった日は最高だったよ。

雪が降り始めたね。
三条大橋のスタバから灰色の空と、
白でちらつく鴨川をそんな君とのやり取りを思い出しながら、
私は今ひとりで、ぼんやりと眺めている。




★私は君のことを


今は我はわびそしにける息の緒に思ひし君をゆるさく思へば   巻4-644 紀女郎


今も、私は君のことを想い続けいるから、
この恋がいい思い出のままで終わることを後悔してないよ。





★もし、あのとき、君にひどいことを言ってなかったら


見れど飽かずいましし君が黄葉の移りいぬれば悲しくもあるか   巻3-459 県犬養宿禰人上


去年、君と一緒に電車に乗って、
ライトアップされたもみじのトンネルをくぐったのはいい思い出だね。

街路樹が色づき始めると、いまだに君のことを思い出してしまうんだ。
もし、あのとき、君にひどいことを言ってなかったら、
今も、君は隣にいてくれたのかな。

あのとき、感情に任せて、ひどいこと言って、ごめんね。





★恋つつ、君を待つ


雨降らずとの曇る夜の濡れひづと恋ひつつをりき君待ちがてり  巻3-370 安倍朝臣広庭


泣きながら突っ伏して眠り、目覚めても、
窓から見える世界はまだ雨が降らないまま、
重い灰色のままだった。

青いTシャツの袖は濡れたままだし、
テーブルに置いたままのiPhoneに通知は来てないし、
君にごめんねって言葉は伝わらないんだって、
余計、君のことが待てなくなった。





★虚空を秋色に染めて


秋萩の上に置きたる白露の消かもしなまし恋ひつつあらずは  巻8-1608 弓削皇子


結局、今日もあまり眠れなくて、
少しだけ冷えた9月の朝なのに、上賀茂神社をひとりで歩いている。
1年半付き合って、振られた気持ちはまだ癒えなくて、
幻くらいの早さで、
眩しい君との日々が消えるのを感じているよ。

1か月で失恋の傷が癒えるらしいけど、本当なのかな。

深い緑の中で咲く、薄いピンクが微かに濡れて、
柔らかい朝日の所為でキラキラしていた。
今までの恋の思い出や、
今の気だるさも、1か月後に消えたらいいのに。




★偶然を意図的に。無意識を意識的に


別れてもまたも逢ふべく思ほえば心乱れてわれ恋ひめやも   巻9-1805 田辺福麻呂
 

もしかしたら、君にまた会えるかもって、
今日も人で溢れた駅の中で無意識に君を探しているよ。

まだ、心が乱れたままで、
君のことは頭の中から消えないけど、
とりあえず、気持ちを落ち着かせるために、
スタバに入って桃色のフラペチーノを飲むことにした。





★ふわっとした関係は続いたまま


君に恋ひしなえうらぶれ我が居れば秋風吹きて月傾きぬ  巻10-2298 作者未詳


君とは友達以上恋人未満のふわっとした関係は続いたままで、
今日も秋が深まった夜の公園でふたりでホットのボトルカフェラテを飲んで、
ただ、他愛もないやり取りで終わってしまった。

夜の淵に白く遠く光る月明かりの下で、
私はどうすればいいのかをぼんやり考えながら、
歩いているけど、簡単に答えなんて見つからないや。

冷たい風が通り抜けて、私の髪先が鼻に触れた。






★新しいイメージを手に入れたい


梅の花咲けるが中に含めるは恋ひや籠れる雪を待つとか  巻19-4283  茨田王


この恋が芽生えるには、雪が溶けるのを待つような、
消極的な行動じゃなくて、
ただ、君の前では素直なポジティブを意識すればいいって、
いつかの、タイムラインで見たから、
緊張したけど、初めて行くサロンを予約したよ。

新しいイメージの自分で君に会いたい。






★すべもない恋


このころは君を思ふとすべもなき恋のみしつつ音のみしそ泣く  巻15-3768 狭野茅上娘子



この前からずっと、君のこと思うと、
憂鬱な恋すぎて、ただ、泣きたくなるよ。






★春の所為で、なにもかも馴染めないよ


春の日のうら悲しきに後れ居て君に恋ひつつ現しけめやも   巻15-3752 狭野茅上娘子


春になったばかりなのに、
新しい生活に馴染めてないのに、
あなたは簡単に私の前から去ってしまったね。

ただね、君に恋しつつ、うつつ抜かしたまま、
しっかりと君の話を聞かせてほしかった。





★ただ、ふたりで笑い合いたかった


君がむた行かましものを同じこと後れて居れど良きこともなし   巻15-3773 狭野茅上娘子


こうなるなら、もっと君との未来を話し合っておけばよかったね。
そしたら、きっとふたりは今も一緒に旅に出て、
笑い合っていたかもね。







3、どうやって恋を忘れたらいいんだろう ――大伴宿禰家持(おおとものすくねやかもち)の男子視点な恋愛観




✪雨は降り続けている


ひさかたの雨は降りしくなでしこがいや初花に恋しき我が背  巻20-4443 大伴宿禰家持

カフェのカウンター席から、雨の街をぼんやりと眺めている。
ガラスに映る頬杖をついている僕は、
今、ひとりきりなんだって、実感しているよ。

無邪気な君のことがただ、恋しいんだ。
だから、この雨が降り止む前に、
君に「ごめんね」とメッセージを打つことにした。






✪わかっているけど、名前は「恋」


恋ふといふはえも名付けたり言ふすべのたづきもなきは吾が身なりけり 巻18-4078 大伴宿禰家持



名前をつけるとしたら「恋」だってことくらいわかっているよ。
この気持ちは「恋」以外にマッチングするわけがないじゃん。
そのくらい、自分でも十分、わかっているよ。





✪恋が押し寄せたら、無理


常の恋いまだ止まぬに都より馬に恋ひ来ば荷ひ堪へむかも 巻18-4083 大伴宿禰家持


移ろいやすく、惚れやすい僕は恋の病にかかっているんだと思う。
そんなこと、ないとは思うけど、無数の恋が僕を襲ったら、
僕はショートして耐えきれなくなるよ。






✪今は今を楽しみたい


さ百合花ゆりも逢はむと思へこそ今のまさかも愛しみすれ 巻18-4088 大伴宿禰家持


出会ったばかりなのに、どうして、こんなに君との話が楽しいんだろう。
集団のなかでガヤガヤする今は、今で楽しんで、
あとで君と集団の中から抜け出したい。





✪年単位での再会なのに


かくしても相見るものをすくなくも年月経れば恋しけれやも 巻18-4118 大伴宿禰家持


君と会えて嬉しいよ。
年単位での再会なのに、
君の可愛さは変わっていないね。

あのときの気持ちが一気に蘇っちゃったよ。





✪夢だけでみた君


はねかづら今する妹を夢に見て心の内に恋ひ渡るかも 巻4-705 大伴宿禰家持


夢で初めて会った君に恋するのは、自分でも変だって思うよ。
実在するのか、わからない君を今日もひそかに恋い慕う。





✪神様の言うとおり


我が恋は千引きの石を七ばかり首に掛けむも神のまにまに 巻4-743 大伴宿禰家持
 

この恋は、クラッキングラテを割るくらい覚悟が軽かったら、きっとこの恋に悩まないんだと思う。
だけど、苦しさを首にあっさりとかけてしまうくらい、この恋を実らせたい。
そんなこと言うわけなんてないけど、神様の言うとおりに。





✪こんなことで負けない


世の中の常なきことは知るらむを心尽くすなますらをにして 巻19-4216 大伴宿禰家持


別に愚痴なんて言ったって、仕方ないくらい、もう、十分わかってるんだ。
世の中に情がないことが、たまに嫌になるんだ。

ただ、こんなことでクヨクヨするなって、今日も自分を鼓舞する。






✪絶交してやってもいいよ


なかなかに絶ゆとし言はばかくばかり息の緒にして我恋ひめやも 巻4-681 大伴宿禰家持


絶交してやってもいいよ。

むしろ、「絶交してやる」って言って、
僕の息の根を止めてよ。

そうすれば、お前とバカ笑いした日々を、
笑える楽しかった思い出に変えられるから。





✪失恋の先は鈍い重さ


今更に妹に逢はめやと思へかもここだ我が胸いぶせくあるらむ 巻4-611 大伴宿禰家持


もう、今更なんだよ。
だから、もう、君には会わないって決めてしまうことにしたよ。

そんな君の所為で、僕が深く塞ぎ込んでしまっても、
君は君の場所で輝いていてね。





✪スタバのカウンターでビル街を眺めていても



ねもころに物を思へば言はむすべせむすべもなし妹と我手携はりて
朝には庭に出で立ち夕には床打ち払ひ白たへの袖さし交へてさ寝し
夜や常にありけるあしひきの山鳥こそは峰向かひに妻問ひすといへ
うつせみの人にある我やなにすとか一日一夜も離り居て嘆き恋ふらむここ思へば胸こそ痛き
そこ故に心なぐやと高円の山にも野にもうち行きて遊びあるけど
花のみしにほひてあれば見るごとにまして偲はゆいかにして忘れむものそ恋といふものを  巻8-1629 大伴宿禰家持



スタバのカウンター席から、ビル街を眺めながら、また君のことを思い出した。

君にもう、恋しさとか、そういうのはないのかもしれない。
ただ、あの日、君と手を繋いで、朝の光を見たこと、
また、別な日、君と同じように手を繋いで、夕日を見たこと。
今となっては、すべてが過去の通り過ぎた思い出だね。

だけど、今、どうしてそんな君のことが恋しくて、胸が痛むんだろう。

街に出て、そんな自分をなだめるように、
意味もなくいい感じの服を見たり、意味もなくいい感じの雑貨を見たりしたけど、
もし、一緒に君がいたら、どんな反応したかなって、
ふと君の影が誘ってきたんだよ。

どうやって忘れたらいいんだろう。
君との恋を。