佐鳥「興梠と坂巻の鍵垢はいったん置いておいて。次に、ニコさんに見ていただきたいものがあるんです」
ニコ「今度はなんなんですか?」
佐鳥「彼女らが通っていたN市のAK高校なんですが」
ニコ「わー。そこまで調べあげているんですか……」
佐鳥「近年、行方不明者が多発しているんです」
ニコ「ええ?」
佐鳥「AK高校に関する、新聞記事のURLをDMで送りますから、見てみてください」
ニコ「はあ……」



『2013年12月14日 C新聞』  



N市の男子高校生が行方不明 下校中に忽然と 人通りの少ない通学路

13日の17時ごろ、両親が警察に連絡。
通っている高校の下校中に、行方不明になったものとして、警察や地元関係者によって捜索が続けられている。

男子高校生はいつも同じ通学路で学校に通っており、道中には人通りの少ない通りもあったとのこと。
警察は、付近の住民に、当時怪しい車などがなかったかどうかの聞きこみを行い、事件性も視野に、捜索を続けていく方針。

去年2012年7月、同校の女子高生が1人、同じく行方不明となっており、まだ見つかっておらず、男子高校生の安否が気遣われる。



『2015年3月24日 Y新聞』

N市の女子高校生が行方不明 心配の両親 早く見つかってほしい

N市に住む17歳の女子高校生が、23日から行方不明。
警察が捜索を進めている。

行方不明になっているのは、N市に住む高校2年生。
23日22時ごろから行方が分からなくなっているという。
翌日24日の朝に家族が警察に行方不明者届を提出。

家族および、近隣住民に聞き取り調査を行ったほか、周辺の防犯カメラを確認したが、有力な情報はまだ見つかっていないという。
警察は、事件あるいは事故に巻きこまれた可能性も視野に、捜索を続ける方針。
警察では、広く情報提供を求めている。



『2020年8月2日 S新聞』

女子高生行方不明 N市の高校生 警察署が情報提供呼びかけ

N市のAK高校1年生・常川ゆいさん(16歳)が行方不明になっている。
両親がゆいさんの素性を公開し、広く情報提供を求めている。


警察の調べでは、ゆいさんは1日10時ごろ、友人と電車に乗って市外のカラオケに行き、15時30分ごろ最寄りの駅に帰ってきていた。
その後16時ごろ、市内のコンビニですがたを目撃されている。
コンビニでは、ゆいさんはひとりで、すでに友人たちとは別れた後だったようだ。
だがそれ以降の情報がなく、捜査は難航しているもよう。



ニコ「なるほど。これらすべて、同じAK高校なんですか……」
佐鳥「そうです」
ニコ「たしかに、同じ高校で起こった事件と思うと、数が多すぎますね」
佐鳥「多すぎるどころではありませんよ。これは異常といっていいでしょう」
ニコ「そうですね。ですが、学校側もこんなに行方不明者が多発したら、たまったもんじゃありませんよね」
佐鳥「でしょう? そこも、異常なんです」
ニコ「え?」
佐鳥「ふつう、こんなに以上事件が起きたら、PTAが保護者会を開いたりだとか、学校側に抗議を起こしたりしてもおかしくないでしょう。なのに、そういったことが一切ないんです」
ニコ「それはおかしいですね。ふつうだったら、行方不明事件が1回起きただけでも、PTAが何かしらの動きをするんじゃないかと思ってしまうんですが」
佐鳥「この学校にいたっては、なんのアプローチもないんです。さざなみ程度の波も、起きていないみたいなんですよね」
ニコ「何か理由があるんでしょうか。巨大な権力に、口封じされているとか!」
佐鳥「ニコさんがたどりつきそうな推理ですね」
ニコ「何か問題でもっ?」
佐鳥「いえ、そっちのほうがまだ平和だったかもしれませんね」
ニコ「え……? どういうことですか」
佐鳥「ちょっと調べてみたんですが」
ニコ「はあ……」
佐鳥「この学校、毎年秋に、おかしな行事があるんですよね」
ニコ「行事、ですか……?」
佐鳥「AK高校の年間行事予定のプリントのPDFを手に入れたので、URLに変換したものをリプライに貼りますね」
ニコ「どうやって手に入れるんですか、そんなもん……」



【10月行事予定 AK高等学校】

 1日 生徒会長候補受付開始
 2日 |
 3日 |
 4日 ↓
 5日 
 6日
 7日 選挙運動期間
 8日 |
 9日 | 5時間授業
10日 | 5時間授業
11日 | 5時間授業
12日 | 会計監査・PTA実行委員会
13日 |
14日 | スポーツの日
15日 | 5時間授業 2年修学旅行
16日 | 5時間授業
17日 | 中間考査
18日 ↓ 中間考査
19日 
20日 
21日 立会演説会
22日 生徒会会長選挙
23日 いじめアンケート
24日 修学旅行前健診
25日 ぬら (~10/30)
26日
27日
28日
29日
30日 芸術鑑賞会
31日
※不明点は、教頭までご連絡ください。

ニコ「ぬら……?」
佐鳥「聞いたことのない行事ですよね」
ニコ「青森の『ねぶた』だとか、大阪の『だんじり』のようなものじゃないでしょうか」
佐鳥「そうですね。地方の行事のひとつということは、じゅうぶんに考えられます」
ニコ「『ねぶた』は、もともと『眠り流し』という行事が元となっているみたいですね。それが、『ねむた祭り』と訛り、今の『ねぶた祭り』になったようです。『だんじり』も、山車を意味する西日本の方言みたいですよ。長く長くやっている行事が、月日とともに言葉が崩れ、訛り、その地方独特の言語になる。おうおうにして、ありえることじゃないですか」
佐鳥「もちろん、それはぼくも考えましたよ。でも、こういう祭りなら、地元のホームページに掲載されていてもいいんじゃないかな、と思うんですよね。小さな祭りでも町の広報に乗ったりだとか、最近だと熱心な地方議員がSNSで祭りのようすを発信したりしてるんですよ。でも、そういう情報がいっさいないんです。『ぬら』というものがなんなのか、みじんもわからないんですよ」
ニコ「……それは、なんというか、奇妙ですね」
佐鳥「でしょう? とても、興味をひかれてしまうんですよね」
ニコ「うわあ。でたでた。佐鳥さん、本当に興味をひかれたことには、容赦なく首を突っこみますよね。興味をひかれたものなら、断頭台にだって、首を突っこんじゃいそう。……ほら、アリスさんが、泣き笑い絵文字、送ってきてますよ」
佐鳥「そうですね。ぼくは、知りたいと思ったら、どこにだって行っちゃいますからねえ」
ニコ「うーん。大丈夫なんですか? 聞いた限り、なんだか不穏、ですよ」
佐鳥「だから、面白いんじゃないですか」
ニコ「仕事、忙しいんですよね」
佐鳥「……まあ、なんとかなるでしょ。仕事をしないと、趣味の人形作りもできませんからね」
ニコ「ちょっと、人形作りと異変調査、どっちが佐鳥さんの本命の趣味なのかわからなくなってきました」
佐鳥「どちらもがんばりたいんですよ」
ニコ「うわー。死なないでくださいよ」
佐鳥「冗談として、受け取っておきます。さて、次にですが、ちょっと気になる『まとめサイト』と、『インターネット掲示板』を見つけたんですよ。ちょっと見てみてもらえますか」