ニコ「こんばんはー」
佐鳥「ニコさん。こんばんは」
ニコ「お久しぶりです。何か月ぶりですかね」
佐鳥「ですね。去年の秋ぐらいに、別ジャンルでのオフ会でお会いして、それから会ってないんじゃないですか」
ニコ「じゃあ、1年くらい会ってないんだ。時が過ぎるのはやすぎますね」
佐鳥「いやあ、年取るたびにそれを感じますね……」
ニコ「あはは。てか、最近あまりSNSにいなくないですか? お忙しそうですよね。あっ、レインさん。こんばんはー」
佐鳥「おお、レインさん。お久しぶりです。……わあ。どんどん人が集まってくる」
ニコ「佐鳥さんの人形、人気ありますもんねー。すでに50人くらいのファンが集まってますよ。最近、お忙しそうで、スペースやれてませんでしたもんね」
佐鳥「いやあ仕事が忙しいのなんの。めっきり時間が取れなくて。最近はニコさんのホラー映画考察動画もめっきり拝見できてなくて。おもしろそうな映画、昨日公開したじゃないですか」
ニコ「ああ。『グラディス』ですよね。今朝、見に行きました! 面白かったですよー。子役の子が、いい仕事してるんですよね」
佐鳥「あいかわらず、お早い」
ニコ「近々、考察動画あげますよ」
佐鳥「それは見なくては!」
ニコ「佐鳥さんは、どうなんですー? わたしだって、佐鳥さんの球体関節人形のファンなんですから。次の子、楽しみにしてますよ」
佐鳥「ええ。でも、今作ってる子の眼球がなかなか決まらなくて。仕事の忙しさもあって、作業が進まないんですよね……」
ニコ「今さらですけど、よかったんですか? お忙しいのに、スペースなんて」
佐鳥「いえ、こちらがお誘いした場ですしね。お引き受けいただけて、すごく嬉しかったんですよ。実は、ホラー界隈のかたたちとお話ししたいネタができちゃったんですよね。ほら、つい昨日、ここのSNSであったことなんですけど」
ニコ「えっ。昨日のやつって、それインスターのストーリーのやつです? 女子高生の」
佐鳥「そうそう。……あっ、アリスさんだ。お久しぶりです」
ニコ「わっ、お久しぶりです~。……えーっと、あれって、マジのやばい案件なんですか? わたし、リポストで流れてきたやつをなんとなく見ただけなんですよね」
佐鳥「そうなんですか。実はぼく、かなり気になってて。仕事のスキマ時間とかに、けっこうガッツリ調べちゃってるんですよ」
ニコ「仕事はー?」
佐鳥「してますよ!」
ニコ「あいかわらず、気になりだすととことん調べるタイプですよねえ」
佐鳥「そう。ぼく、こういうに目がないじゃないですか。だから、作業もそっちのけで、調べものばかりしちゃってて。最近、作りかけの子の視線が痛いんですよね。まだ、眼球はないはずなのに」
ニコ「あらら。嫉妬しちゃってるんじゃないですか? 早く、作ってあげないと」
佐鳥「そうなんです。だから、さっさと気のすむまで、調べつくしちゃわないといけないんですよ。なので、聞いてもらえますかね? ぼくの話」
ニコ「もちろん、いいですよ」
佐鳥「よかった。では、話しますけれど……たぶん、あの事件。ただの人間トラブルではないと思います。実際は、〝コッチ〟よりの話だと思うんですよ」
ニコ「ホラーずき界隈の話ってことですか?」
佐鳥「ええ。以前のスペースでも話したと思うんですけど、ユーチューバーの消されたアーカイブとか、潰れた居酒屋の話とかしたじゃないですか。これらと、地続きの話なんじゃないかと思っていて」
ニコ「……いや。えっと。そんな話、こんなところで、おおっぴらに話しちゃっていいんですかね。うちらも巻きこまれて炎上、なんてことになりません?」
佐鳥「大丈夫ですよ。だれがこのスペースのことをいいふらすんですか」
ニコ「まあ、ここにいる50人くらいの人たちはみんな、佐鳥さんのファンですしね。わっ、53人になった。……それに、レインさんとアリスさんという長年のお付き合いのかたたちもいますから、信頼が違います」
佐鳥「じゃあ、ことの顛末をおさらいしましょうか」
ニコ「は~い」
佐鳥「さる、2週間まえの10月4日。X内のとあるポストがバズったことで、N市内の女子高生のインスタが炎上。内容は、彼女のクラスメイトに学校の屋上から飛び降りをさせた、という内容のストーリーだった。のちに、その女子高生のインスターで、真っ黒の画像が数十枚、連続投稿される。それは、ただの黒い画像ではなく、グリッド投稿というもので、暗闇のなかの死体を撮った1枚の大きな画像を分割して投稿したものだった——というのが、一連の流れです」
ニコ「後日、実際にテレビのニュースでも、女子高生の飛び降りがあったという報道がありましたよね。未成年なので、どちらも本名は明かされませんでしたけど、このアカウントの子で間違いないって、ネットで話題だったし。事実なんだとは思いますが。後味が悪い話ですよ。例のグリッド投稿も……つまり、飛び降りした子の写真を撮って、分割して、投稿したってことですよね。どうしてそんなことをしたのか、未成年とはいえ、理解に苦しみます」
佐鳥「SNS内では、女子高生がインスターのアカウントを消したことで、逃げたなんていってるやつもいました。いじめをしたんだからきちんと償えって、誹謗中傷の嵐でしたね」
ニコ「ええ……ひどいところですよ、インターネットは。おとなだろうと、未成年だろうと、叩いていい人なんていないのに」
佐鳥「まあ、それはさておき」
ニコ「いやいや。さておかないでくださいよっ」
佐鳥「ぼくが興味を引かれたのは、もちろんグリッド投稿のことです。女子高生のアカウントは消えましたが、ネットの海から完全に消え去ることは不可能に近い。とうぜん、まとめサイトにポストはまとめられていました」
ニコ「魚拓ってやつですね。インスターのアカウントを消しても、画像をスクショしたものは、SNSに大量に投稿されてしまってます」
佐鳥「その通りです」
ニコ「それで? 何がわかったんですか。佐鳥さんは、何かに気づいたわけですよね。あの事件、について」
佐鳥「グリッド投稿をした理由なんですが。そもそもグリッド投稿のメリットというのが、投稿した画像を印象的に見せる目的はユーザーに対して印象を残せる、ということなんですよね。画像を分割して、投稿したときに一枚の絵になるようにすることで、通常よりも大きいサイズの画像が表示されます。視覚的に映えるんですよね。そんなわけで、インフルエンサーはもちろん、最近は企業の公式アカウントまで、広告画像などは、グリッド投稿で宣伝しているようですね」
ニコ「グリッド投稿については、よくわかりましたが、肝心の女子高生の投稿については、どうなんですか?」
佐鳥「つまりですね。女子高生はこれから投稿する画像を《多くの人間に見せるため》に、グリッド投稿をしたんじゃないかと思っています」
ニコ「いや、まさか。それって、死体を——って、ことですか」
佐鳥「そうです」
ニコ「動機がわかりません……何のために?」
佐鳥「そこなんですが。動機は……飛び降りた女子高生に、成仏してもらうため、なんじゃないかと。この世に未練を残さず、逝ってもらいたい。飛び降りた女子高生の望みを叶え、あと腐れなく成仏してもらうため、彼女はグリッド投稿をしたんです」
ニコ「え?」
佐鳥「ちなみに、いじめられていたほうの女子高生が興梠蓮華という名前で、いじめていたほうは坂巻伊呂波といいます」
ニコ「はっ? 本名っ? だめです、だめです! このスペース、録音しちゃってるんですよ!」
佐鳥「興梠蓮華の未練は、『ぬら血になりたい』」
ニコ「……なんですか、それ。いや、それはいったん置いておいて、どこからそんな情報仕入れたんですか。たしかなんでしょうね」
佐鳥「もちろん。証拠はこれです。今、スペースのポストにコメントでぶらさげました。まず、これ。興梠と坂巻の鍵垢です。このSNSのね」
ニコ「え……鍵垢じゃあ見れないじゃないですか」
佐鳥「今はもう、鍵は外れてますよ」
ニコ「鍵垢なのに、どうして鍵が開いているんですか」
佐鳥「さあ。開けたい理由があった、んじゃないですか」
ニコ「……はあ。さっきの興梠さんの未練もこの鍵垢で仕入れた情報ということですか」
佐鳥「納得いっていないようすですが、ニコさんも気になっているんでしょう? あなたは、世間の目を気にする場では理性的なふりをしていますが、その実、興味を抱けばとことん調べつくすタイプの人間ですから。ぼくと同じでね」
ニコ「……えーと、じゃあ見てみますよ。ふたりの鍵垢……」
佐鳥「自分に正直でよろしいですね。ポストの数は、ふたりともえげつない数字なので、事件と関連ありそうなものだけ抜粋してあります。ぼくのアカウントのハイライトへ飛んだら、見やすいと思いますので、どうぞ」
佐鳥「ニコさん。こんばんは」
ニコ「お久しぶりです。何か月ぶりですかね」
佐鳥「ですね。去年の秋ぐらいに、別ジャンルでのオフ会でお会いして、それから会ってないんじゃないですか」
ニコ「じゃあ、1年くらい会ってないんだ。時が過ぎるのはやすぎますね」
佐鳥「いやあ、年取るたびにそれを感じますね……」
ニコ「あはは。てか、最近あまりSNSにいなくないですか? お忙しそうですよね。あっ、レインさん。こんばんはー」
佐鳥「おお、レインさん。お久しぶりです。……わあ。どんどん人が集まってくる」
ニコ「佐鳥さんの人形、人気ありますもんねー。すでに50人くらいのファンが集まってますよ。最近、お忙しそうで、スペースやれてませんでしたもんね」
佐鳥「いやあ仕事が忙しいのなんの。めっきり時間が取れなくて。最近はニコさんのホラー映画考察動画もめっきり拝見できてなくて。おもしろそうな映画、昨日公開したじゃないですか」
ニコ「ああ。『グラディス』ですよね。今朝、見に行きました! 面白かったですよー。子役の子が、いい仕事してるんですよね」
佐鳥「あいかわらず、お早い」
ニコ「近々、考察動画あげますよ」
佐鳥「それは見なくては!」
ニコ「佐鳥さんは、どうなんですー? わたしだって、佐鳥さんの球体関節人形のファンなんですから。次の子、楽しみにしてますよ」
佐鳥「ええ。でも、今作ってる子の眼球がなかなか決まらなくて。仕事の忙しさもあって、作業が進まないんですよね……」
ニコ「今さらですけど、よかったんですか? お忙しいのに、スペースなんて」
佐鳥「いえ、こちらがお誘いした場ですしね。お引き受けいただけて、すごく嬉しかったんですよ。実は、ホラー界隈のかたたちとお話ししたいネタができちゃったんですよね。ほら、つい昨日、ここのSNSであったことなんですけど」
ニコ「えっ。昨日のやつって、それインスターのストーリーのやつです? 女子高生の」
佐鳥「そうそう。……あっ、アリスさんだ。お久しぶりです」
ニコ「わっ、お久しぶりです~。……えーっと、あれって、マジのやばい案件なんですか? わたし、リポストで流れてきたやつをなんとなく見ただけなんですよね」
佐鳥「そうなんですか。実はぼく、かなり気になってて。仕事のスキマ時間とかに、けっこうガッツリ調べちゃってるんですよ」
ニコ「仕事はー?」
佐鳥「してますよ!」
ニコ「あいかわらず、気になりだすととことん調べるタイプですよねえ」
佐鳥「そう。ぼく、こういうに目がないじゃないですか。だから、作業もそっちのけで、調べものばかりしちゃってて。最近、作りかけの子の視線が痛いんですよね。まだ、眼球はないはずなのに」
ニコ「あらら。嫉妬しちゃってるんじゃないですか? 早く、作ってあげないと」
佐鳥「そうなんです。だから、さっさと気のすむまで、調べつくしちゃわないといけないんですよ。なので、聞いてもらえますかね? ぼくの話」
ニコ「もちろん、いいですよ」
佐鳥「よかった。では、話しますけれど……たぶん、あの事件。ただの人間トラブルではないと思います。実際は、〝コッチ〟よりの話だと思うんですよ」
ニコ「ホラーずき界隈の話ってことですか?」
佐鳥「ええ。以前のスペースでも話したと思うんですけど、ユーチューバーの消されたアーカイブとか、潰れた居酒屋の話とかしたじゃないですか。これらと、地続きの話なんじゃないかと思っていて」
ニコ「……いや。えっと。そんな話、こんなところで、おおっぴらに話しちゃっていいんですかね。うちらも巻きこまれて炎上、なんてことになりません?」
佐鳥「大丈夫ですよ。だれがこのスペースのことをいいふらすんですか」
ニコ「まあ、ここにいる50人くらいの人たちはみんな、佐鳥さんのファンですしね。わっ、53人になった。……それに、レインさんとアリスさんという長年のお付き合いのかたたちもいますから、信頼が違います」
佐鳥「じゃあ、ことの顛末をおさらいしましょうか」
ニコ「は~い」
佐鳥「さる、2週間まえの10月4日。X内のとあるポストがバズったことで、N市内の女子高生のインスタが炎上。内容は、彼女のクラスメイトに学校の屋上から飛び降りをさせた、という内容のストーリーだった。のちに、その女子高生のインスターで、真っ黒の画像が数十枚、連続投稿される。それは、ただの黒い画像ではなく、グリッド投稿というもので、暗闇のなかの死体を撮った1枚の大きな画像を分割して投稿したものだった——というのが、一連の流れです」
ニコ「後日、実際にテレビのニュースでも、女子高生の飛び降りがあったという報道がありましたよね。未成年なので、どちらも本名は明かされませんでしたけど、このアカウントの子で間違いないって、ネットで話題だったし。事実なんだとは思いますが。後味が悪い話ですよ。例のグリッド投稿も……つまり、飛び降りした子の写真を撮って、分割して、投稿したってことですよね。どうしてそんなことをしたのか、未成年とはいえ、理解に苦しみます」
佐鳥「SNS内では、女子高生がインスターのアカウントを消したことで、逃げたなんていってるやつもいました。いじめをしたんだからきちんと償えって、誹謗中傷の嵐でしたね」
ニコ「ええ……ひどいところですよ、インターネットは。おとなだろうと、未成年だろうと、叩いていい人なんていないのに」
佐鳥「まあ、それはさておき」
ニコ「いやいや。さておかないでくださいよっ」
佐鳥「ぼくが興味を引かれたのは、もちろんグリッド投稿のことです。女子高生のアカウントは消えましたが、ネットの海から完全に消え去ることは不可能に近い。とうぜん、まとめサイトにポストはまとめられていました」
ニコ「魚拓ってやつですね。インスターのアカウントを消しても、画像をスクショしたものは、SNSに大量に投稿されてしまってます」
佐鳥「その通りです」
ニコ「それで? 何がわかったんですか。佐鳥さんは、何かに気づいたわけですよね。あの事件、について」
佐鳥「グリッド投稿をした理由なんですが。そもそもグリッド投稿のメリットというのが、投稿した画像を印象的に見せる目的はユーザーに対して印象を残せる、ということなんですよね。画像を分割して、投稿したときに一枚の絵になるようにすることで、通常よりも大きいサイズの画像が表示されます。視覚的に映えるんですよね。そんなわけで、インフルエンサーはもちろん、最近は企業の公式アカウントまで、広告画像などは、グリッド投稿で宣伝しているようですね」
ニコ「グリッド投稿については、よくわかりましたが、肝心の女子高生の投稿については、どうなんですか?」
佐鳥「つまりですね。女子高生はこれから投稿する画像を《多くの人間に見せるため》に、グリッド投稿をしたんじゃないかと思っています」
ニコ「いや、まさか。それって、死体を——って、ことですか」
佐鳥「そうです」
ニコ「動機がわかりません……何のために?」
佐鳥「そこなんですが。動機は……飛び降りた女子高生に、成仏してもらうため、なんじゃないかと。この世に未練を残さず、逝ってもらいたい。飛び降りた女子高生の望みを叶え、あと腐れなく成仏してもらうため、彼女はグリッド投稿をしたんです」
ニコ「え?」
佐鳥「ちなみに、いじめられていたほうの女子高生が興梠蓮華という名前で、いじめていたほうは坂巻伊呂波といいます」
ニコ「はっ? 本名っ? だめです、だめです! このスペース、録音しちゃってるんですよ!」
佐鳥「興梠蓮華の未練は、『ぬら血になりたい』」
ニコ「……なんですか、それ。いや、それはいったん置いておいて、どこからそんな情報仕入れたんですか。たしかなんでしょうね」
佐鳥「もちろん。証拠はこれです。今、スペースのポストにコメントでぶらさげました。まず、これ。興梠と坂巻の鍵垢です。このSNSのね」
ニコ「え……鍵垢じゃあ見れないじゃないですか」
佐鳥「今はもう、鍵は外れてますよ」
ニコ「鍵垢なのに、どうして鍵が開いているんですか」
佐鳥「さあ。開けたい理由があった、んじゃないですか」
ニコ「……はあ。さっきの興梠さんの未練もこの鍵垢で仕入れた情報ということですか」
佐鳥「納得いっていないようすですが、ニコさんも気になっているんでしょう? あなたは、世間の目を気にする場では理性的なふりをしていますが、その実、興味を抱けばとことん調べつくすタイプの人間ですから。ぼくと同じでね」
ニコ「……えーと、じゃあ見てみますよ。ふたりの鍵垢……」
佐鳥「自分に正直でよろしいですね。ポストの数は、ふたりともえげつない数字なので、事件と関連ありそうなものだけ抜粋してあります。ぼくのアカウントのハイライトへ飛んだら、見やすいと思いますので、どうぞ」