しかし、死神は涼しい顔で、僕の意見をバッサリと切り捨てる。

「そもそも、心穏やかな者は、こんな胡散臭話には、飛び付かぬ」
「……ぐっ……」

 僕は、死神の言葉に、声にならない声を出す。そんな僕に、死神は冷ややかな視線を向ける。

「それに、万に一つ、飛び付いたとして、多くの者に怒りを撒き散らすなど、簡単には出来まい。せいぜい、1人か2人に当たり散らすくらいのものだ」
「……」
「それをいとも容易(たやす)くやり終えたソナタは、滅殺基準を充分に満たしておる」

 何だよそれ? 僕は完全に嵌められたってことか?

「なんだかんだ言ってるけど、そもそも、この変なゲームの釣りのせいじゃないか! 1000万円貰えるんじゃないのかよ!」

 死神は心底呆れたように、溜息をつく。

「デマカセに決まっておろう。常識的に考えれば怪しいと分かりそうなものだが、ソナタは、バカか?」

 死神の言葉に、情けなくも、あんぐりと口を開けて、僕が絶句していると、死神は、意地悪そうにニヤリと笑う。

「まぁでも、そうだな。1000万AGは付与してやろう」
「……そんな使えないポイントなんか……」

 僕は、涙目で死神を睨みつける。

「今後、最高神ゼウスの意向によって、多くの『怒り狩』を行うことになる。しかし、私1人では手が足らなくなるのは明らかだ。そこで、1000万AGを有している者を死神見習いとして採用しよう。どうだ?」
「イヤだよ! 誰が死神なんかに……」
「そうか? では、ソナタを処分するしかあるまいな。見習いとなれば、ソナタは死ぬことはないのだが……まぁ、良い」

 そう言うと、死神はガチャリと大鎌を構えた。

「まま、待って、待って。死ななくて良いってどう言う事?」

 僕は、死神の言葉の意味を慌てて聞く。

「死神となれば、死という概念が無くなるのだ。永遠にその場にあり続ける。その代わり、ソナタの生きた証はこの世から全て消し去る」
「消えるけど、あり続ける?」
「そうだ。今回のことで、ソナタは友の心に傷を付けた。死してなお、疎まれ続けるか。誰の記憶にも残らないか。選ばせてやる」

 僕は無言で考えた。1人悶々と考えた。死んでから、嫌われるなんて、とても嫌だった。

 僕がようやく出した答えを告げると、死神が大鎌を一振りした。

 僕は、全身黒い服に包まれる。部屋はただの空室と化し、僕の痕跡は見事に消えてなくなった。

「では、2人目のクリア者のもとに行くぞ」

 死神に連れられて、僕は無言で闇世へと飛び出した。







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『Get rid of anger 〜怒り狩〜』、完結しました☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆
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さてさて明日からは、『Ash clock』が連載開始!
ある男に、砂を集めるように指示を出された。なぜ僕は砂を集めなければならないのか?
明日の15時をお楽しみに♪