品川は、金持ちだ。金払いがいいから、友人という隠れ蓑を利用して、僕は常に奢ってもらっている。

 あいつは、いつもニコニコと支払いをしてくれる。

 だけど本当は、生まれつき一般庶民である僕のことを、腹の中では見下しているんじゃないだろうか。

『品川! お前本当は、いつもニコニコと支払いながら、僕のこと、ビンボー人だとか思ってるんだろ! ビンボー人に施しを与えてやってるとか思って、いい気になってるんじゃねぇーよ!』
 
 これでやっと5人。メッセージを送る度に、胸がチクリと痛むけれど、そんな事に構っていられない。

 急げ! 急いで、メッセージを送りまくれ!

 僕は、自分自身を鼓舞すると、次のメッセージ相手を検討する。

 そう言えば、大崎が、最近彼女ができたとニヤニヤしながら自慢してきてたな。正直、あのニヤケ顔には、ウンザリした。よし! 6人目は、コイツだ。

『彼女が出来たからって、勝ち組みたいな顔すんじゃねーよ。どうせこっちは、年齢イコールだよ。悪りぃか!』

 僕は、鼻息荒く、紙飛行機アイコンをタップする。

 チクショー。彼女、いいな……モテたいなぁ……

 つい本音がダダ漏れになってしまったが、ゲームをクリアして1000万を手に入れれば、僕だって、モテ組に入れるはず。

 目指せモテ組! 目指せ、1000万!

 次、五反田。コイツは、正直、面白い。いつもツッコミが、斜め上をいっている。しかし、そういう時は、大体本人に自覚がない。いい才能を持っているのに、ちょっと売れだしたお笑い芸人の真似なんかして、才能を潰している。もったいない奴だ。

『お前、いい加減、誰かのマネするのやめろよ! 笑えねぇ』

 8人目は、目黒。超絶イケメン。モデルばりのスタイル。勉強も、運動も並だが、それでも僕よりは出来る。コイツの欠点って、なんだ?

『…………足、長すぎなんだよ! 歩幅合わせるの大変なんだぞ!!』

 くそ。やっぱり、イケメンには、勝てねぇ……。

 気を取り直して、9人目、恵比寿。正義感が強すぎる。友達同士でちょっとふざけあったりするだけで、すごい剣幕で注意してくる。正直、苦手なタイプ。

『正義感を振りかざすんじゃねぇ! お前のせいで、場がシラけるんじゃ!』

 やっと折り返しの10人目。渋谷は、正直者にバカが付く奴。

『何でもかんでも、正直に話せばいいと思うな! 言わなくても良いことがある事を知れ!!』

 おや? なんだか、少しずつ理不尽な怒りが、スムーズに出てくる様になった気がするぞ。