なんだ、コレ? 

 あまりにも唐突で、単純すぎるその一文に、僕は面食らう。眉間にシワを寄せつつ、画面をスクロールすると、下の方にルールが記載されていた。

“ただし、次のルールを守ること

1.メッセージの内容は、相手が理不尽だと感じる内容でなければならない
2.メッセージを送る相手は、自身が所有する携帯端末に連絡先が登録されている者でなければならない

※メッセージアプリは、端末内であれば、どのアプリを使用してもゲーム内で自動認証されます”

 さらに画面をスクロールしてみたが、それ以上の詳細は、何もない。

 僕は腕を組み、しばし考えを巡らすが、幾ら考えても、これまでにこの様な形式のゲームをした事がなく、この先、ゲームがどの様に展開していくのか、先が全く読めなかった。

 これ以上考えても埒が明かない。不思議なミッションだが、一攫千金のプレミアイベントに参加するためには、考えている暇などない。とにかく、ミッションをやるのみだ。

 僕はメッセージアプリを起動すると、友人達の名前を表示し、ミッション遂行に向けて、スマホ画面を睨みつけた。

 まずは、親友である(あずま)の個人画面を表示する。

 深夜に理不尽なメールを送りつけるのだ。普通に考えれば、大変迷惑な行為であって、謝ったところで、友情に多少の亀裂を生みかねない。

 しかし、東という友人は、ノリが軽く、大概のことは、気にするなと言って特に気に留める様子を見せない奴なのだ。きっと奴ならば、明日直接会って、事の次第と謝罪をすれば、快く許してくれるだろう。

 僕は、この不可解で、不可思議なミッションに対する小さな猜疑心を、自分に都合の良い言い訳で封じ込めると、素早く画面に文字を打ち込んだ。

『お前、友人が多い事自慢して、人徳だとか言ってるけど、お前のその軽いノリなんとかしろよ。一緒にいるオレまで、軽い奴だと思われるだろ!』

 理不尽な怒りとはこんな感じでいいだろうか?

 自分で打った文面を読み返して、首を傾げる。しかし、何が正解なのか分からない。僕は、深呼吸を1つすると、心にかかるモヤモヤを振り払う様に、ギュッと目を瞑り、勢いよく、紙飛行機型のアイコンをポンとタップした。

 画面に、今打った文章が吹き出しで表示された。これが既読になるのは、夜が明けてからだろう。目覚めて、この文を目にした時、奴はどんな思いをするのだろうか。

 チクリと痛む心を、見て見ぬフリをして、僕は、2人目のメッセージ画面を開いた。