そうしてソラがおもしろおかしく思い出話を持ち出しては、リクが実情を訴え、それをミウが笑うことをくり返した。

 モノトーンに差し色でワインレッドのシャツが胸元にのぞくファッションが、さらに大人びて見えるミウにやはり、あのころと同じくリクは目を奪われていた。
 その彼女が見せる、少し控えめで深みのある笑顔が何度も見たくて、リクはソラの振ってくる冗談じみた話の乗りに終始合わせて、その夜を過ごした。

 別れぎわ、リクは「今夜はありがとう」と二人に礼を述べた。
「今度は男二人だけで酒飲みたいな」
 ソラがそう返すと、ミウがくりくりしている目を、さらに大きく見張った。
「何それ?」

 リクは肩で笑いながら車を出ていき、家の扉の前で振り返り手を振る。ソラの車は、それを見届けるとアクセルを一回空吹かししてから走り去った。