ソラは、実家暮らしで両親と暮らしている。
既に両親の寝静まったところへ帰宅し、食卓に並んでいるラップがけされた食事に目をやってから冷蔵庫にある缶ビールを一個つかむと、二階の自室にこもった。
ビールを開け一口飲んでから電話を入れる。まもなくリクが出た。
いつもこのような時間に掛けるから、待ち構えていたのだろう。
リクはちょうど今、東京から地元に戻ってきているらしい。
「そうかあ。オレは、新卒入社の子らが入ってきたし、ゴールデンウィークもあるさかい、バタバタしとるわ」
おどけたソラの口調につられたのだろう。リクは苦笑いした。
「どやねん、リクは。丸二年たったし、少しは仕事、つかめてきたか」
リクは息を飲んだ。
「それが実は」
「ん?」
「三月末で辞めた」
ソラは「あららー」と、驚いてみせた。
「なんやまた、第二新卒扱いで就活するんか」
「いや」
「ほな、とりあえず地元でニートか」
「いや」
ソラが「どないすんねん」と迫ったら、リクは言葉を濁した。
改めて一緒に食事をしながら、じっくり話したいと言った。
長くなる話でもあるのだろうか。ソラは、首をかしげながらも、せっかくの帰郷中、そういう場があっても面白いと思って、二つ返事で受けた。
「また、ソラの都合のいい日が分かったらメールして」
「うん、そやな」
「じゃあ…」
電話が切れる前にソラが「あっ」と声を上げた。
「え、何?」
「あのなー、ミウ、おぼえとるやろ?」
「…あ、ああ、笠原のことか。……なつかしいな」
「連れて行っていいか」
リクには予想外の申し出だったのだろう。
ややあってから「もちろん」という声がして、ほどなく電話が切れた。
既に両親の寝静まったところへ帰宅し、食卓に並んでいるラップがけされた食事に目をやってから冷蔵庫にある缶ビールを一個つかむと、二階の自室にこもった。
ビールを開け一口飲んでから電話を入れる。まもなくリクが出た。
いつもこのような時間に掛けるから、待ち構えていたのだろう。
リクはちょうど今、東京から地元に戻ってきているらしい。
「そうかあ。オレは、新卒入社の子らが入ってきたし、ゴールデンウィークもあるさかい、バタバタしとるわ」
おどけたソラの口調につられたのだろう。リクは苦笑いした。
「どやねん、リクは。丸二年たったし、少しは仕事、つかめてきたか」
リクは息を飲んだ。
「それが実は」
「ん?」
「三月末で辞めた」
ソラは「あららー」と、驚いてみせた。
「なんやまた、第二新卒扱いで就活するんか」
「いや」
「ほな、とりあえず地元でニートか」
「いや」
ソラが「どないすんねん」と迫ったら、リクは言葉を濁した。
改めて一緒に食事をしながら、じっくり話したいと言った。
長くなる話でもあるのだろうか。ソラは、首をかしげながらも、せっかくの帰郷中、そういう場があっても面白いと思って、二つ返事で受けた。
「また、ソラの都合のいい日が分かったらメールして」
「うん、そやな」
「じゃあ…」
電話が切れる前にソラが「あっ」と声を上げた。
「え、何?」
「あのなー、ミウ、おぼえとるやろ?」
「…あ、ああ、笠原のことか。……なつかしいな」
「連れて行っていいか」
リクには予想外の申し出だったのだろう。
ややあってから「もちろん」という声がして、ほどなく電話が切れた。