──私の出る幕はやはりなかったようですね、、。

と心の中で呟き私は踵を返し、灯台を降りた。

「影!雨夜は?」

とこちらへ駆けてくる若い男がいた。

「葉月〔はづき〕!どうして此処へ?」

夜雨とタッグを組んでいた男だった。

この件も夜雨と共に仕事をしていた。

「夜雨が心配で、、。今回の件、いつもより険しい顔をしていたし、様子がおかしかったので。連絡を取ろうとしても、取れなくなって。探していたんです。それで、夜雨は?」

前のめりになりながら葉月が訊いた。

「もう大丈夫です。今、灯台の上で妹たちといますよ。」

「よかった、、。」

大きく息を吐きながらそう言った。

「ところで、、どうして雨夜の本名を知っているんです?」

「え?!、、えっと、、訊いたので、、すみません、、。」

あからさまに顔を赤くして言い訳をしている。

──なんだ、妹たち以外にも、夜雨のことを大切に想っている人がいたじゃないですか、、。本当に、私の出る幕はないですね、、。

心の中で自嘲気味にそう言った。

「葉月、夜雨とはどうなんですか?」

「え?!えーっと、、まだ、、です。」

「しっかりしなさい。すぐ人に取られちゃいますよ。あと、、夜雨のこと、悲しませるようなことをしたら私が復讐しますから。」

「は、はい!」

敬礼でもするような勢いで返事をした。

「よろしい。」

──それにしても、葉月が夜雨のことを好きだったとは、、。そういえば、夜雨の様子がおかしかった頃、私に報告しに来たのも、、葉月だった、、。
夜雨の少し遅い青春を見るのも悪くないですね、、。

私は内心ほくそ笑んだ。

──私も、夜雨のこと、大切に想っていますからね。ずっと見守っていますよ。これからもよろしくお願いします。

灯台を見つめながら私は思った。