夜雨の腕は、空を切った。

そこに、健次郎の体は無かった。

崖の端の岩が、、崩れた跡だけが、、残っていた。

「え、、?」

夜雨の戸惑いの声と同時に、健次郎の悲鳴と、ザバン!という飛沫の音が聴こえた。

夜雨は、地面にへたり込んだ。

──終わった、、。本当に、終わった。私の、、復讐という名の戦いは、、終わったんだ。

夜雨は空を見上げた。

空は暗くなり始めていた。

「お父さん、お母さん、私、、やり遂げたよ。」

空に語りかけた。

──嬉しいのかな?悲しいのかな?私、よくわからない。

だけど、何故か夜雨の目から涙が溢れてくる。

「う、、うぅ、、あぁ、、ゔぁ〜!あぁ〜!」

夜雨は泣き叫んだ。

声が枯れ果てるまで。

その姿を空に光る星が見守っていた。

夜雨を、照らしていた。

悲しそうに、でも暖かく見守っていた。

雲の間から顔を出した月も、暖かな光を放っていた。