「殺し屋?」

震える声で、健次郎はそう繰り返した。

そして、全てを悟ったように、顔を青くした。

健次郎は逃げようと戸に手をかけた。

「動くな!」

鋭く、雨夜、、いや、夜雨が言った。

手には拳銃を持っている。

「もう少しで着きます。あ、私はりこさんの居場所は知りません。りこさんには少しご協力いただいたまで。、、こんなに食いつくとは思っていませんでした。りこさん、新しい恋人ができたそうですよ。」

「じゃあ、、りこは?」

夜雨の言葉の意味がわからないと言うように放心気味に言った。

「もちろんいません。」

さらっと事実を言った。

「嘘だったのか!」

今度は健次郎は赤くなりながら怒りをぶつけた。

「りこさんがいる、と言った覚えはありません。ただ、、行けばわかる、と。」

「くっそ、、。」

唇を噛み、悔しがった。

またしばらく走り、夜雨は車を停めた。

「降りてください。、、逃げたらこの拳銃であなたの頭が吹っ飛びますから。」

「、、。」

健次郎は黙って指示に従った。

2人が降り立ったのは断崖絶壁の高台だった。

「あの灯台が、私たちが家族で最後に訪れた、想い出の場所です。私が生まれて初めて行った時、夜でさらさらと雨が降っていたので、夜雨。月の光がとても綺麗に見えたので、妹たちはそれぞれ月雨、光雨、と名付けられました。家族5人で、生きよう、幸せになろうとした場所です。」

夜雨が、遠くに見える灯台を指さして言った。

日が傾き始めていた。

「あれをみても、、認める気になりませんか?」

静かに語った。

「、、お前の望みはなんだ?」

「罪を認め、出頭するか、此処から落ちて、自殺してください。、、あなたは、もう失うものなどないでしょう?」

夜雨は冷たく言い放った。

重い沈黙が流れた。

「わかった、、。認める。出頭する。」

重い口を開いた。

夜雨は拳銃を懐にしまった。

その途端、健次郎は夜雨に向かって突進した。

手にはナイフを持っていた。

「出頭するわけないだろ。失うもん失って、命まで自分から投げ捨てるバカな奴が、、何処にいる?」

健次郎は、ナイフを突き出した。