2週間が経った。
健次郎は病院を退院した。
突然倒れたら、浮気はばれて、離婚を切り出された。
健次郎の地位と権力は一瞬にして無くなった。
そんな健次郎はりこに電話をした。
「りこか?オレだ。健次郎だ。妻とは別れた。だから」
「もう、あんたとは終わりよ。もうかけてこないで、、。最後に教えてあげるわ。騙してたのは、、あたしの方よ。じゃあね。」
とりこが健次郎の言葉に重ね一方的に言い放った。
──どういうことだ、、。
健次郎は黙って電話の切れたスマホを見つめることしかできなかった。
♦︎♦︎♦︎
その後、咲希と圭が出ていった家に向かった。
ほとんどの家具は咲希が持っていってしまった。
残っているのは健次郎の少ない荷物だけだった。
急に家が寂しくなった。
健次郎は、りこにも、咲希にも、会社にも、、捨てられた。
──終わった、、。本当に、、終わった。
健次郎はベッドに転がった。
と、同時に、インターホンが鳴った。
──誰だ、、?こんな時に、、。
健次郎は戸を開けようとした。
「警察です、坂本健次郎さん、開けてください。」
と扉を叩く音が聞こえた。
──警察、だと?まさか、、。まさか!あの罪がバレたのか?いや、、計画にはぬかりはなかったはずだ。
慌ててリビングに引き返した。
と、同時にスマホが鳴り出した。
「りこ!」
りこの番号からの着信だった。
──やっぱり、りこはオレのことを捨ててはいなかったのだ。
「りこ!オレ、、お前のこと」
〈いえ、私はりこではありません。今から迎えに行きますので、裏口から出てください。もし、、来なければ、警察に捕まります。〉
誰かわからない女の声が聴こえた。
そして一方的に要件を言ったあと、電話は切れてしまった。
健次郎は、戸惑いながらも裏口から道路へ飛び出した。
「こちらです。」
と電話の女の声が聞こえた。
振り向くと、そこには狐の面をかけた女が立っていた。
「ある場所に、今から来てください。」
「そこに、りこがいるのか?」
一刻も早くりこに会いたい健次郎だった。
「行けばわかります。もし、来なければ、、。」
「行く。」
健次郎はすぐにそう答えた。
──りこが、、行ってしまう。りこにも、捨てられてしまう。
「この車に乗ってください。」
女が後ろに止めてある車を指差した。
健次郎は、この車に乗れば、なにかが壊れるような気が、不安がした。
だが、りこのことを想うと、気持ちが楽になった。
──なにもかも奪われた。息子も、妻も、職も、地位も、、全て失った。頼れるのは、、りこだけだ。姉貴にも、弟にも、失望されただろう。早く、早く、りこに会いたい。
そう思い、健次郎は車に乗り込んだ。
狐の面の女は黙って運転席に座った。
健次郎は何故か背筋に冷や汗が伝った。
♦︎♦︎♦︎
女はしばらく車を走らせた。
健次郎は口を開けかけた時、唐突に女が語り出した。
「あなたは、3年前、ある女性を裏切った。、、ある女性は、恋人に、、信じていた恋人に、、自分はただの遊び相手だった、と気付かされました。しかも、その恋人は、夫を轢き殺した、真犯人だった。この、交差点で8年前、夫を殺した男を、その女性は信じてしまったのです。」
「なんの話だ?」
またも冷や汗が健次郎を伝う。
「もう一度、幸せを掴みたいと、その女性は踏ん張ってきました。なのに、信じた相手は、、既婚者でありながら、複数の女性と関係を持つ、クソ野郎だった。それに加えて、その女性はある記事を見つけます。そこには、恋人の名が犯人として載っていました。嘘だと思ったようです。でも、、あなたに捨てられた時、全てを悟ったそうです。今の恋人が、、亡き夫の仇だった、と。ある記事、とはこれです。」
女は記事を健次郎に見せた。
あの、健次郎が人を轢き殺した事故で、運転していたのは、同乗者の坂本健次郎という人物だった。と言う内容の記事だった。
──確かこの記事はすぐに間違いだと訂正されたはずだ。個人が勝手に報道した。申し訳ない、と言うようなことを新聞会社に謝られた記憶がある。
「ある男性は、娘たちのために早く帰ろうとしていました。そこに、、飲酒運転の車が突っ込んだ。娘たちへのプレゼントを力強く握りしめたまま、、その人は亡くなりました。その、幼い娘たちは、、父親の優しさや、温もりを、、覚えていません。」
健次郎は黙って、狐の面の女を見つめることしかできなかった。
「女性は、絶望を味わいました。何度も這いあがろうとしました。なのに、同じ男に落とされました。、、その女性は、生きる気力を無くして、亡き夫の元へ旅立ちました。この、、交差点のそばのあの川に入水自殺しました。」
「ふ、ふざけるな!そ、それと、、俺に、なんの関係があるんだ。」
「関係?大アリです。だって、、あなたは、坂本健次郎は、今話した家族を、壊した人です。幼い娘を持つ父を殺し、生きていこうとした母をも裏切った。それは、、あんただ!」
「お前は、、誰だ?、、なにをしようとしている?」
「まだ、、わかりませんか?私は、、あなたを殺すために、、生きてきました。父と母を殺した、あなたを。父の名は、裏山星夜(せいや)。母の名は、裏山月光(ひかり)。、、そして、私の名は、裏山夜雨(うらやまよう)。雨夜という名で、、殺し屋をしています。」
と、同時に、女は仮面を取った。
健次郎は病院を退院した。
突然倒れたら、浮気はばれて、離婚を切り出された。
健次郎の地位と権力は一瞬にして無くなった。
そんな健次郎はりこに電話をした。
「りこか?オレだ。健次郎だ。妻とは別れた。だから」
「もう、あんたとは終わりよ。もうかけてこないで、、。最後に教えてあげるわ。騙してたのは、、あたしの方よ。じゃあね。」
とりこが健次郎の言葉に重ね一方的に言い放った。
──どういうことだ、、。
健次郎は黙って電話の切れたスマホを見つめることしかできなかった。
♦︎♦︎♦︎
その後、咲希と圭が出ていった家に向かった。
ほとんどの家具は咲希が持っていってしまった。
残っているのは健次郎の少ない荷物だけだった。
急に家が寂しくなった。
健次郎は、りこにも、咲希にも、会社にも、、捨てられた。
──終わった、、。本当に、、終わった。
健次郎はベッドに転がった。
と、同時に、インターホンが鳴った。
──誰だ、、?こんな時に、、。
健次郎は戸を開けようとした。
「警察です、坂本健次郎さん、開けてください。」
と扉を叩く音が聞こえた。
──警察、だと?まさか、、。まさか!あの罪がバレたのか?いや、、計画にはぬかりはなかったはずだ。
慌ててリビングに引き返した。
と、同時にスマホが鳴り出した。
「りこ!」
りこの番号からの着信だった。
──やっぱり、りこはオレのことを捨ててはいなかったのだ。
「りこ!オレ、、お前のこと」
〈いえ、私はりこではありません。今から迎えに行きますので、裏口から出てください。もし、、来なければ、警察に捕まります。〉
誰かわからない女の声が聴こえた。
そして一方的に要件を言ったあと、電話は切れてしまった。
健次郎は、戸惑いながらも裏口から道路へ飛び出した。
「こちらです。」
と電話の女の声が聞こえた。
振り向くと、そこには狐の面をかけた女が立っていた。
「ある場所に、今から来てください。」
「そこに、りこがいるのか?」
一刻も早くりこに会いたい健次郎だった。
「行けばわかります。もし、来なければ、、。」
「行く。」
健次郎はすぐにそう答えた。
──りこが、、行ってしまう。りこにも、捨てられてしまう。
「この車に乗ってください。」
女が後ろに止めてある車を指差した。
健次郎は、この車に乗れば、なにかが壊れるような気が、不安がした。
だが、りこのことを想うと、気持ちが楽になった。
──なにもかも奪われた。息子も、妻も、職も、地位も、、全て失った。頼れるのは、、りこだけだ。姉貴にも、弟にも、失望されただろう。早く、早く、りこに会いたい。
そう思い、健次郎は車に乗り込んだ。
狐の面の女は黙って運転席に座った。
健次郎は何故か背筋に冷や汗が伝った。
♦︎♦︎♦︎
女はしばらく車を走らせた。
健次郎は口を開けかけた時、唐突に女が語り出した。
「あなたは、3年前、ある女性を裏切った。、、ある女性は、恋人に、、信じていた恋人に、、自分はただの遊び相手だった、と気付かされました。しかも、その恋人は、夫を轢き殺した、真犯人だった。この、交差点で8年前、夫を殺した男を、その女性は信じてしまったのです。」
「なんの話だ?」
またも冷や汗が健次郎を伝う。
「もう一度、幸せを掴みたいと、その女性は踏ん張ってきました。なのに、信じた相手は、、既婚者でありながら、複数の女性と関係を持つ、クソ野郎だった。それに加えて、その女性はある記事を見つけます。そこには、恋人の名が犯人として載っていました。嘘だと思ったようです。でも、、あなたに捨てられた時、全てを悟ったそうです。今の恋人が、、亡き夫の仇だった、と。ある記事、とはこれです。」
女は記事を健次郎に見せた。
あの、健次郎が人を轢き殺した事故で、運転していたのは、同乗者の坂本健次郎という人物だった。と言う内容の記事だった。
──確かこの記事はすぐに間違いだと訂正されたはずだ。個人が勝手に報道した。申し訳ない、と言うようなことを新聞会社に謝られた記憶がある。
「ある男性は、娘たちのために早く帰ろうとしていました。そこに、、飲酒運転の車が突っ込んだ。娘たちへのプレゼントを力強く握りしめたまま、、その人は亡くなりました。その、幼い娘たちは、、父親の優しさや、温もりを、、覚えていません。」
健次郎は黙って、狐の面の女を見つめることしかできなかった。
「女性は、絶望を味わいました。何度も這いあがろうとしました。なのに、同じ男に落とされました。、、その女性は、生きる気力を無くして、亡き夫の元へ旅立ちました。この、、交差点のそばのあの川に入水自殺しました。」
「ふ、ふざけるな!そ、それと、、俺に、なんの関係があるんだ。」
「関係?大アリです。だって、、あなたは、坂本健次郎は、今話した家族を、壊した人です。幼い娘を持つ父を殺し、生きていこうとした母をも裏切った。それは、、あんただ!」
「お前は、、誰だ?、、なにをしようとしている?」
「まだ、、わかりませんか?私は、、あなたを殺すために、、生きてきました。父と母を殺した、あなたを。父の名は、裏山星夜(せいや)。母の名は、裏山月光(ひかり)。、、そして、私の名は、裏山夜雨(うらやまよう)。雨夜という名で、、殺し屋をしています。」
と、同時に、女は仮面を取った。