「うぅ、、。あぁ、、。」

健次郎は女性が言い争う声で目覚めた。

咲希とりこの声だった。

──だが、、何故此処に?何故2人とも此処にいる?というか、此処は何処だ?

「健次郎?あぁ、、よかった。此処は病院よ、急に倒れたからびっくりして。」

姉の詩羽が言った。

──急に、、倒れた?オレが?

「健次郎さん、、。これは、どういうことですか?」

「健くん!どういうことよ!」

2人が両サイドから声を荒げている。

「あたしのこと、、愛してるって言ったわよね?」

と、りこが訴えるように言った。

「だ、、誰だ、、お前?」

健次郎はそう言った。

──りこのことは好きだが、咲希に勘違いされれば、オレの立場が、、。オレの地位がなくなる。それを捨てるバカが何処にいる?

「う、、うそ、、。あたしのことわからないの?あたしよ、あたし、山田りこよ。」

「知らない。こんな女、なにかの間違いだ。」

勝ち誇ったように咲希が微笑を浮かべた。

「オレが浮気しているわけないだろ。咲希、、お前だけだ。」

少し、息があがりながら健次郎は言った。

「嘘、、嘘よ、、。」

真っ青になりながらりこは病室を出ていった。

──大丈夫。りこならわかってくれる。

「咲希、、。」

健次郎はベッドのそばに寄り添う咲希の名を呼んだ。

咲希は笑顔で頷いた。

「健次郎さん、、、私と、離婚してください。」

咲希は微笑を浮かべたまま、そう言った。

「は?」

「あの人と浮気してたんですよね?だから、別れてください。親からも承諾を得ました。圭の親権も私が持ちます。」

病室にしっかりと響き渡る、凛とした声でそう言った。

「なにを、、言っているんだ?」

──どういうことだ?離婚、、?親の承諾は得ている?

「咲希、オレは、、浮気なんて、していない。」

息も切れながら弁解を続ける健次郎。

「証拠写真です。これを見せても、まだ言い訳をしますか?」

冷たい目で咲希はそう続けた。

咲希の手には、りこと健次郎が腕を組んで歩いている写真があった。

「この写真の他にも、いかがわしい写真もありますけど?見せた方がいいですか?」

「、、、す、すまない。でも、離婚だけは、やめてくれ。圭もまだ小さい。それに、お前、オレがいないと生きていけないだろ?」

焦りから健次郎は青くなった。

「生きていけないのは、あなたの方です。私の父のおかげで会社の重役に就き、社会的地位を築いてきた。だから、、壊れるのは、あなたの方です。」

冷たく言い放った。

そして、机の上に置いてあるスマホを手に取った。

「さらに、、この会話は、私の父と母が聴いています。」

〈健次郎くん、君には失望したよ。咲希とは別れてもらう。もちろん、圭の親権も咲希だ。、、浮気をして、咲希を裏切ったのは君だ。〉

電話越しに咲希の父の怒りを押し殺した声が聞こえた。

「そ、、そんな、、。」

〈会社もやめてもらう。離婚したら、もう、わたしたちとの関わりは、ない。〉

「わ、わかりました。」

弱々しく健次郎は承諾するしかなかった。