「雨夜、今よろしいですか?」
私は電話をかけた。
〈はい、どうかしましたか?〉
「おりいって話があるのです。社長室に来ていただけますか?」
〈わかりました。では。〉
雨夜は本気であの男殺しに此処に来たのだろう、、。
──でも、、。
と、私の思考を遮るように扉がノックされた。
「お待たせしました。」
雨夜は1分もしないうちに社長室に入ってきた。
「、、早いですね。調べ物ですか?」
社長室の2つ隣の部屋には例の資料置き場がある。
「はい。」
悪びれもなく雨夜は素直に答えた。
──この子は、、本気だ。
私は小さくため息を吐いた。
そして、こう切り出した。
「では、単刀直入に言います。雨夜、此処を辞めてください。」
「え、、?なんでですか?」
驚きを隠せず、戸惑っている。
「雨夜。あなたは、あの男を殺すため、此処に来たんですよね?でも、、本当は、人を殺すこと自体を学びにきたんですよね?」
雨夜は黙ったまま 息を呑んだ。
私はそれを同意の意味にとって続けた。
「いわば、、犯罪行為の練習をしに来た。自分がしくじって捕まらないように練習をしにきた。あの男がターゲットになればその時はその時。と言う風に思っていたんじゃないですか?」
少し俯きながら、雨夜が小さく答えた。
「そうです、、。1年前、私は此処にきました。出来れば、、あの男と同じ手は、使いたくなく、、自分が手を汚さずに行う方法がないかと探しに此処にきました。そして、、練習をしにきました。そして、、あわよくば、個人的にあの男を殺そうと考えていました。」
そこまで話して雨夜は黙った。
「私も殺したい人がいました。」
私は雨夜に語りかけた。
「えっ?」
私は息を深く吸い込んで、続ける。
「私は事故で息子を亡くしました。まだ、6歳でした。るうちゃんやみうちゃんと同じくらいですね。、、交通事故でした。小学校から帰る途中、暴走車が児童の列に突っ込んだんです。運転手は生きていた、、。なのに、息子は死にました。たった6年で、あっちに行きました。許せなかった、、。」
雨夜は私の話を真剣に聞いてくれた。
私は溢れる涙を必死に堪え私は言葉を続けた。
「私も、、そいつを殺すためにネットで情報を集めました。そうしたら、同じように苦しんでいる人を見つけました。だから、、同じ思いの人を救うために、この仕事をしようと決意しました。もう戻ることはできませんでした。他に方法があったのかもしれませんが、私にはもうなにも守るものはなかった。なので、犯罪コンサルタントとして人を救おうとしました。」
「、、そうだったんですね、、。」
「えぇ、、。そして、私たちは、ルールを決めました。犯罪は犯罪でも、依頼人が望むものしか私たちはしてはいけないと。」
──そうしないと、取り返しのつかないことになってしまうから。そうしないと、悔いても悔やみきれないことになるから。
「依頼人が犯罪の仕方を教えてくれと言われたら計画を練る。殺すまではしないが、社会的に破滅させたいと望む人もいます。、、ですが雨夜。あなたのやっていることは、依頼人のためではありません。自分のためです。」
私は強い口調で言った。
「あなたを雇った時も、言いましたよね?ターゲットは依頼人の望む人のみだ、と。この掟を守れないのなら、此処をやめてください。部屋を出ていけとは言いませんが、他の仕事を探してください。」
私はキッパリと言った。
──私は会社の掟だからやめろと言った。でも、、。
本心は違う。
まだ16歳の少女に、私のようになってほしくないのだ。
──雨夜なら、まだ間に合う。正しい道へと引き戻したい。此処で引き止めないと私は絶対に後悔する。
私には大切な人が誰もいなかった。
でも、雨夜には守るべきものがある。
2人の幼い妹が。
私は息子と2人のことを重ねているのだ。
──なんとしても、、引き止めなければ。
「わかりました。やめます。」
私は思わず顔を上げた。
「でも、、もう一度、雇い直してください。」
「え、、?」
私は、雨夜が次に続けた言葉に耳を疑った。
「今度こそ私は依頼人のためにこの仕事をします。、、あんな男、すぐに依頼が来ます。もう1年、5年、10年かかったとしても復讐をやり遂げます。覚悟はできました。」
冷たい目を私に向けた。
「雨夜、、。」
──あぁ、、。この子はなにを言っても聞かないようだ、、。
私は直感した。
こんなことを言っても雨夜には通じない、というのは、一年もわたしたちといるのだ。
最初からわかっていた。
──けど諦めたくなかった。、、認めたくなかった。
「、、わかりました。これからもよろしくお願いします。雨夜。」
そう告げた。
──雨夜が本気なら、私も本気で向き合わなければ。
雨夜のためにも。
私たちのためにも。
私のためにも。
◇◇◇
社長室から出た雨夜は、小さくため息を吐いた。
──影さんが私を、妹たちや私のために止めてくれているのはわかっている。
冷たい目を雨夜は地面に向けた。
──だけど、どうしても、私は復讐する。母を、そして、父までも殺されたんだ。
雨夜は拳を硬く握りしめた。
──どうしてその男を生かしておけよう、、。あの憎き男、坂本健次郎を。
私は電話をかけた。
〈はい、どうかしましたか?〉
「おりいって話があるのです。社長室に来ていただけますか?」
〈わかりました。では。〉
雨夜は本気であの男殺しに此処に来たのだろう、、。
──でも、、。
と、私の思考を遮るように扉がノックされた。
「お待たせしました。」
雨夜は1分もしないうちに社長室に入ってきた。
「、、早いですね。調べ物ですか?」
社長室の2つ隣の部屋には例の資料置き場がある。
「はい。」
悪びれもなく雨夜は素直に答えた。
──この子は、、本気だ。
私は小さくため息を吐いた。
そして、こう切り出した。
「では、単刀直入に言います。雨夜、此処を辞めてください。」
「え、、?なんでですか?」
驚きを隠せず、戸惑っている。
「雨夜。あなたは、あの男を殺すため、此処に来たんですよね?でも、、本当は、人を殺すこと自体を学びにきたんですよね?」
雨夜は黙ったまま 息を呑んだ。
私はそれを同意の意味にとって続けた。
「いわば、、犯罪行為の練習をしに来た。自分がしくじって捕まらないように練習をしにきた。あの男がターゲットになればその時はその時。と言う風に思っていたんじゃないですか?」
少し俯きながら、雨夜が小さく答えた。
「そうです、、。1年前、私は此処にきました。出来れば、、あの男と同じ手は、使いたくなく、、自分が手を汚さずに行う方法がないかと探しに此処にきました。そして、、練習をしにきました。そして、、あわよくば、個人的にあの男を殺そうと考えていました。」
そこまで話して雨夜は黙った。
「私も殺したい人がいました。」
私は雨夜に語りかけた。
「えっ?」
私は息を深く吸い込んで、続ける。
「私は事故で息子を亡くしました。まだ、6歳でした。るうちゃんやみうちゃんと同じくらいですね。、、交通事故でした。小学校から帰る途中、暴走車が児童の列に突っ込んだんです。運転手は生きていた、、。なのに、息子は死にました。たった6年で、あっちに行きました。許せなかった、、。」
雨夜は私の話を真剣に聞いてくれた。
私は溢れる涙を必死に堪え私は言葉を続けた。
「私も、、そいつを殺すためにネットで情報を集めました。そうしたら、同じように苦しんでいる人を見つけました。だから、、同じ思いの人を救うために、この仕事をしようと決意しました。もう戻ることはできませんでした。他に方法があったのかもしれませんが、私にはもうなにも守るものはなかった。なので、犯罪コンサルタントとして人を救おうとしました。」
「、、そうだったんですね、、。」
「えぇ、、。そして、私たちは、ルールを決めました。犯罪は犯罪でも、依頼人が望むものしか私たちはしてはいけないと。」
──そうしないと、取り返しのつかないことになってしまうから。そうしないと、悔いても悔やみきれないことになるから。
「依頼人が犯罪の仕方を教えてくれと言われたら計画を練る。殺すまではしないが、社会的に破滅させたいと望む人もいます。、、ですが雨夜。あなたのやっていることは、依頼人のためではありません。自分のためです。」
私は強い口調で言った。
「あなたを雇った時も、言いましたよね?ターゲットは依頼人の望む人のみだ、と。この掟を守れないのなら、此処をやめてください。部屋を出ていけとは言いませんが、他の仕事を探してください。」
私はキッパリと言った。
──私は会社の掟だからやめろと言った。でも、、。
本心は違う。
まだ16歳の少女に、私のようになってほしくないのだ。
──雨夜なら、まだ間に合う。正しい道へと引き戻したい。此処で引き止めないと私は絶対に後悔する。
私には大切な人が誰もいなかった。
でも、雨夜には守るべきものがある。
2人の幼い妹が。
私は息子と2人のことを重ねているのだ。
──なんとしても、、引き止めなければ。
「わかりました。やめます。」
私は思わず顔を上げた。
「でも、、もう一度、雇い直してください。」
「え、、?」
私は、雨夜が次に続けた言葉に耳を疑った。
「今度こそ私は依頼人のためにこの仕事をします。、、あんな男、すぐに依頼が来ます。もう1年、5年、10年かかったとしても復讐をやり遂げます。覚悟はできました。」
冷たい目を私に向けた。
「雨夜、、。」
──あぁ、、。この子はなにを言っても聞かないようだ、、。
私は直感した。
こんなことを言っても雨夜には通じない、というのは、一年もわたしたちといるのだ。
最初からわかっていた。
──けど諦めたくなかった。、、認めたくなかった。
「、、わかりました。これからもよろしくお願いします。雨夜。」
そう告げた。
──雨夜が本気なら、私も本気で向き合わなければ。
雨夜のためにも。
私たちのためにも。
私のためにも。
◇◇◇
社長室から出た雨夜は、小さくため息を吐いた。
──影さんが私を、妹たちや私のために止めてくれているのはわかっている。
冷たい目を雨夜は地面に向けた。
──だけど、どうしても、私は復讐する。母を、そして、父までも殺されたんだ。
雨夜は拳を硬く握りしめた。
──どうしてその男を生かしておけよう、、。あの憎き男、坂本健次郎を。