「桜子さん! 大変だあ! 桜子さんの妹が長屋に……!」
「えっ」

 真千子がこっちに来たって言うの!? 真千子とその友人には居場所は伝えていない。どこから嗅ぎつけて来たんだろうか……。

「すみません、一旦店閉めます!」

 屋台に閉店の木札をかけて自宅の長屋に向かうと、そこには赤い艶やかな着物を着た真千子が自室を物色していた。

「真千子さん! 何しに来たんですか!?」

 自分でも驚くくらいの大きな声が出た。こんな声で彼女に恫喝めいた事をするのは初めて。そのせいか、真千子は眉間に皺を寄せながら私の方へと振り向く。

「お姉様……何よその口は。まあ良いわ。お金を頂戴」
「そんな、あなたに貸せれるお金は無いのよ……。見たら分かるでしょ?」
「お姉様はうどん屋の屋台をやっているじゃない」

 うどん屋の屋台はしているけど、それでもあなたの暮らしよりも贅沢は出来ないのに。

「……どうしてお金がいるの?」
「借金があるのよ」

 実家がそんな事になっているとは思わなかった。事業に失敗でもしたのだろうか?
 でも、どんな理由があっても真千子にお金は貸せない。

「ごめんなさい真千子さん。お金は貸せないわ。他をあたって……」