「見つかると良いですね」

 とだけ、言うにとどめておく。おそらく私ではないだろう。と思いたいし、探しているのは私? と思うなんてうぬぼれすぎている。

「そうねえ、桜子さん。百々公爵家のご当主様はもし見つかったらその方とご結婚したいそうよ」

 彼女のその言葉を聞いてなせだかわからないけど胸がちくりと痛んだ。でもすごい激しく痛い訳じゃないのでいつも通り笑みを浮かべながらそうかもしれないですね。と答える。

「桜子さんはご結婚しないの?」
「えっ」

 結婚だなんて考えた事もない。私には真之がいればそれで良いのに。

「私が良い人紹介するわよ? あやかしと人間どっちが良い?」
「いやいや……今の私はこのうどん屋さんがそれで十分ですから」
「まあまあ、そう言わずに。誰かいた方が楽でしょう」

 勿論誰かいた方が商売的には助かるけど。

「まあ、お見合いしたくなったらいつでも言いなさいよ」
「はい……」

 曖昧な返事しか返せないでいるが、断ったら嫌われそうで嫌だから断れなかった。
 すると、真之を預かっているおばあさんが真之を抱えてこっちに走ってくる。