こうして数日が経過し、私と真之は回復する事が出来た。私が女工さん達や雪女のおばあさんと語っている時以外は裕一郎様が食事に気を遣ったりと看病してくれたのが何よりも大きかった気がする。真之のおしめも女中さんと一緒に変えてくれたり、身体をぬるま湯にくぐらせた手拭いで拭いてあげていたりもしていたそうだ。

「乗れるか?」
「はい、裕一郎様。今までありがとうございました」
「俺としても君と真之君が回復して良かったよ。これからもし何かあればすぐに頼ると良い」

 今から別荘を離れ、黒塗りの最先端を行く高級車に乗り込んで屋敷へと戻る。高級車のシートは革製で思ったよりも硬いが、これはこれで味があるかもしれない。
 車からは風が当たってちょっと冷たいけど、疾走感があふれ出してまるで空を飛ぶあやかしに自分を重ねてしまうくらいだ。

「裕一郎様って空飛んだりできますか?」

 ふと、あちこち目線を飛ばしている真之を抱っこした状態で、隣に座る裕一郎様へと尋ねてみると彼はもちろん。即答した。

「どうした? 一緒に空を飛んでみたいとか思ってる?」
「真之がもっと大きくなってから、3人で。あと空高い所でうどんでも食べてみませんか?」
「いいねえ。やってみようよ」

 これからも3人仲良くやっていきたい。あ、もしかしたら4人5人と増えていくかもしれないけど……。
 家族3人そろっている時が一番幸せだ。例えるなら熱々のうどんのだしくらい、あったかくて安心するから。