数ヶ月後。月のものが遅れて更にご飯の炊ける匂いで吐き気を催した私は子を身ごもっているのが発覚。そして今に至るという訳だ。
 まさか一夜の秘め事で子を身ごもるなんて。しかもその子が父親と同じ九尾の妖狐だなんて。
 でもこの子を守れるのは私だけだ。頑張らないと……。

◇ ◇ ◇

 生まれて来た子には真之(さねゆき)と名付けた。彼はすくすくと育ち、出産後半年がすぎた頃、うどんの屋台を再開させた。

「桜子さん久しぶり! 元気にしてた?」
「はい、おかげさまで……!」
「さっそくだけど、きつねうどんの小ください!」
「はい!」

 屋台の営業中は真之は産婆の元に預けている。なお、お客さんには妊娠出産については明かしていない。お客さんが彼の姿を見たら絶対に大変な事になるのは分かっているからだ。
 そうこうして過ごしている間に月日は流れ、真之は1歳になった。