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 結局その夜は裕一郎様とベッドを共にしてしまった……! 勿論添い寝だけだけど、彼の九尾の尻尾にくるまれて寝ると身体がより温まっていつもより気持ちよく眠れた気がする。
 それに真之がそばにいたのも安心できた。彼は夜中に一度起こして、水分を取っただけで夜泣きしたり寝るのをぐずる事も無かった。
 あっという間に朝が来て、朝食のおじやを少しだけ食べると、昨日と同じく雪女のおばあさんや女工さん達が訪れて色々話をしてくれている。

「それで、今日の昼には帰るんですか?」

 女工さん達は明日から仕事だそうで、今日の昼過ぎには汽車に乗って製糸工場の寮へと帰るらしい。

「桜子さん、また屋台待ってますから!」
「身体、早く良くなりますように、祈っています……!」

 そういえば彼女達は私が裕一郎様との仲は知らないのかな? と思ったけど、ここで種明かしする必要も無いか。
 でも、式を挙げる日には彼女達も招待したい。去り行く彼女達のまだ幼さが残る背中を眺めながらそう思うのである。

「桜子さん、気を付けてね」

 雪女のおばあさんも部屋から去り、戻っていった。
 部屋には誰もいなくなったけど、幸い昨日よりかは症状は少しだけ軽くなっている。