「じゃあ、たくさん甘えてもいいですか?」
「ああ」

 裕一郎様が頷いた後、女中さんが廊下を歩く音が聞こえてきた。その音を聞いた裕一郎様は一旦退出すると、しばらくして真之をゆりかごごとこちらへと連れてくる。

「真之君も一緒でいいか?」
「! はい、もちろんです!」

 真之はゆりかごの中で眠っているが、まだ寝息が荒い。

「ありがとうございます……真之を連れてきてくださって」
「ゆりかごごとなら移動しても大丈夫だと思ってさ」
「確かに……」
「ねえ、桜子さん。今日は一緒に寝ない?」

 いきなりの提案に、私は慌ててそれはよくないです! と返した。だって裕一郎様に伝染(うつ)ったらまずいし……。

「大丈夫だよ。俺は気にしないで」
「で、ですが……」
「ほら」

 ふわっと彼の手が髪に触れる。どきっと心臓が跳ねた。

「……裕一郎様……それはずるいですよ」
「そうかな」

 なおも私の髪を優しく抱き寄せるように掴み、そこへ口づけを落とす。

「……裕一郎様。3人で一緒にいたいです」
「そうだな、俺も同じ気持ちだよ」

 裕一郎様の微笑みが、星のように輝いて見えている。