私のうどんが女工さん達を笑顔にしてくれている。これまでやめなくて本当に良かったし、製糸工場での商売を提案してくれた裕一郎様へも感謝の気持ちで一杯だ。
 その後は女工さんや雪女のおばあさんと会話を楽しんでいると、あっという間に日が暮れた。彼女達は実家へ、雪女のおばあさんは宿へと去っていく。

「ふう……」

 彼女達とひとしきり会話していた間は、倦怠感とかしんどさがどこかへと吹っ飛んでいたようだ。部屋にひとりだけになった瞬間どこかからまた関節の痛みと倦怠感達が私の身体へ襲い掛かって来る。

「……っ」
「桜子さん、入るよ」

 スーツ姿の裕一郎様が部屋に入って来る。その手には書類が握られているという事は……まだ仕事中なのかな。

「お仕事中すみません……」
「気にしないで。君が大事なんだから」
「……あの、ちょっとだけわがまま言っても構いませんか?」

 何? と裕一郎様が口にしながら横髪を耳にかきあげる。その動きには色気が漂っていた。

「少しだけ甘えてもいいですか?」
「勿論。少しだけなんて言わず、たくさん甘えてよ」