「これ、作ったんですか?」
「はい、うちの工場で作っている糸で刺繍しました。たまたまあったので……」
「そうですか。すごいありがたいです……」

 他にも健康祈願などと刺繍されたお守りを受け取ったり、うちの別荘の女中さんには手作りのうどんの麺を差し出したりしたとも聞いた。
 私が以前屋台で提供したものの記憶を頼りに、作ってみたのだとか。

「お口に合うかどうかはわかりませんが……食べて頂けたらと思いまして」
「そうですか……」
「私達、普段料理はあんまりしないから、ちょっとへたくそになっちゃいましたけど……」

 それでも作ってくれた事には変わりはない。ありがたく頂くだけだ。

「出来栄えとかは気にしないでください。それに皆さんがうどんを打ってくれるなんて嬉しいです」
「うどん、思ったより難しいですね」
「塩とか水加減とかね」
「私、桜子さんのうどんが一番好きなんです。桜子さんのおかげでうどんのおいしさを改めて再確認しました」