「あの、今日はこの後どうされるんですか?」
「別荘の近くに宿があるから、そこで泊まろうと思ってね」
「そうでしたか……」
「桜子さん、私いた方が良い? それとも帰っても大丈夫かしら?」

 勿論、いてくれた方が嬉しい。話し相手にもなるし、安心できる。
 裕一郎様はお仕事とか忙しいだろうから甘えにくいし……。

「あの、よかったらもう少しだけいてくださると幸いです……」
「そうか。わかった。じゃあ明日もお見舞いに来るよ」
「ありがとうございます。助かります」
「桜子さん、甘えたい時は素直に甘えて良いんだよ。我慢しなくて良いからさ」

 勿論、そうしたいつもりだ。病気のせいで身体が弱っているのもあるけど。
 すると今度は部屋の外側からばたばたばたと数人分の足音が聞こえてきた。

「どうぞ、こちらになります」

 女中さんに先導されてやってきたのは、製糸工場の女工さん達だった。数は4人。皆雪女のおばあさんと同じような着物と羽織を着用している。

「桜子さん! 心配で来てしまいました……!」
「大丈夫ですか?! 倒れたって聞いて……!」