その後。裕一郎様から真之の反応を聞いた。丸薬は苦かったのか一旦は吐き出そうとしたものの、ちゃんと飲んでくれたらしい。
 ぶどうは丸薬とは真逆で結構食いつきがよかったそうだ。

「という具合だな。またぶどう含めて果物を用意しておこう」

 雪女のおばあさん曰く、こういう時は果物が良いそうで裕一郎様はさっそく別荘に果物を取り扱う商人を呼んであれこれ購入していったのだった。
 
「百々公爵家のご当主様は素晴らしい方だねえ」

 ベッドのそばに設置された簡素な椅子に座り、私の左手を握ってくれている雪女のおばあさん。彼女の少しだけひんやりした手が心地よく感じる。

「ちょっとは楽になってきたかい?」
「はい、なってきました」
「真之君も大丈夫かねえ、ちょっと見て来るね」
「……はい」

 彼女は真之と私を行ったり来たりしながらも、様子を見ていてくれている。

「あの、ここにつくまで結構時間かかったんじゃないですか?」
「それくらいあやかし達の力を借りればどうにかなるわよぅ。最初倒れたって百々家の使用人から聞いた時はびっくりしちゃって」
「ご心配をおかけしてすみませんでした……」
「謝らなくていいよ。生きてりゃこういう時だってあるから」

 人間のはるか上をいくのがあやかしであるという事を、改めて認識させられる。