「そうですか……」
「ちょっと額触ってもいい?」
「はい、お願いします」
「……まだ熱があるね。横になった方が良い」

 彼に促されてまたふかふかのベッドの上に横になる。ぐったりとした倦怠感のせいで身体を動かすのがつらい。

「はあ……」
「辛い?」
「はい……身体を動かすのがしんどいです……」
「……桜子さんには負担をかけてしまってすまない」

 ここで私に頭を下げる裕一郎様の意図がわからなかった。
 確かに劇的な環境の変化はあれど、彼が私に何か負担を負わせた事は無い。うどん屋の屋台だって私がしたい事だし。

「謝らないで下さい。裕一郎様は私に何も迷惑かけてないじゃないですか」
「桜子さん。俺は君と真之君に無茶させてしまったかもと思ってしまって……」
「そのような事はございませんよ。私がやりたいようにしてくださって感謝してます」

 裕一郎様が何か言おうとした時。女中さんに呼ばれた。何やら誰か客人が訪れたみたい。
 部屋には私と紺色の着物姿な女中さんの2人だけとなる。

「奥方様。私がおりますのでご安心ください」
「ありがとうございます……今更ですが、ここはどこなんですか?」