最初こそ拒否したけど、最終的には彼が折れなかったので仕方なくごちそうになってもらった。2人でホットケーキを分けて頂いた後はくだらない話をした後、彼が泊っている宿でもっと話をしないか? という話になった。
 彼へ一目ぼれしてしまっていた私は勿論その誘いに応じる。

「じゃあ、いこっか」

 カフェーを出た後は彼の泊っている立派な旅館の離れにある大きな個室に移動して……なし崩し的に関係を持ってしまった。床で見せた彼の表情は蠱惑的で、だけれども綺麗。身体の筋肉なんかは彫刻みたいというか……ずっと見ていたくなるくらいとにかく綺麗だった。
 そして夜明けとともに目が覚めると、彼の腰から何か生えているのを見つける。

「ん?」

 彼を起こさないようにして慎重に布団をめくってみるとそれは金色に光る妖狐の尻尾だった。それも九つ。そう、彼は九尾の妖狐のあやかしだったのである。
 この国の中枢はあやかしが担っているけど、その中でも九尾の妖狐達の家系である三大公爵家は人々からは畏怖の対象として見られている。

「わ……う、そ、でしょ」
 
 ああ、とんでもない人と夜を過ごしてしまったんだ! と私は怖くなってしまってその場から逃げてしまった。料金は既に彼が先払いしていたのでこちらが払う必要はなかったけど……本当に怖かった。
 そして私はその勢いで長屋を引っ越した。彼から遠く離れたかったのだ。