夜。女中さんと共に真之を寝かしつけていた時だった。

「あれ? 真之の頬こんなに赤かったっけ?」

 試しに頬を軽く触ってみると熱を放っている。女中さんに話すと彼女は真之の額に手を触れた。

「熱がありますね……」
「!」

 真之がこれまで熱を出した事は無い。それに彼はあやかしだ。人間の薬が効くかはわからないし、どうしたら……。

「ご当主様をお呼びします!」

 少しして女中さんが寝間着姿の裕一郎様を連れてきてくれた。

「裕一郎様、真之が……!」
「体調を崩してしまったのか。医者を呼んでくれ……!」
「ご当主様、かしこまりました!」

 裕一郎様も心配そうに真之を見る。やはり熱のせいかやや呼吸が荒い。
 屋敷に来たりして、環境が変わったりしていたから疲れが溜まっていたのかな……。

「あれ?」

 突如、私の視界がぐるりと回る。そして重力に負けたようにその場に倒れ込んでしまった。

「桜子さん? ……桜子さん!」

 次第に視界が真っ白にぼやけていって裕一郎様と女中さんの声が遠のいていく。まるで自分の意識だけがどこかへと離れていっているみたいだ。
 誰かが何かを言っているような気がするけど、私はそのまま意識を手放してしまった。