「私を妾にしてくださいまし。私もあなた様の子を産めますわ」
「なぜだ? 君は妾腹はいやだろう?」
「お姉様が嫁がれるなら、私も一緒に連れて行ってくださいませ」

 にやりと笑う真千子と目が合ったのですぐに目をそらすと、真千子はまたお姉様がいじわるするの! とこれまでしてきたように父親に泣き付こうとする。
 だけど父親は裕一郎様がいるからか、こちらへ近づこうとはしない。

「だってお姉様が産んだ子がこれから元気に生きるとも限らないでしょう?」

 じっと潤ませた瞳で裕一郎様を見る真千子。やっぱりこのまま私の幸せは彼女に奪われてしまうのではないかという不安が心から芽生えて来る。

「いや、俺が真之君と桜子さんを守る。だから君は必要ない」
「きゃっ」

 真千子の手を振りほどいた裕一郎様は私の手を握って、つかつかと玄関へ歩を速めていった。ちょっと早歩き過ぎてついていくのが大変だけど、もうこの屋敷には戻りたくないと考えているのは裕一郎様と同じ。

「ま、待ってください! 裕一郎様! 待ってださい!」