「援助だと?」

 裕一郎様が怪訝そうな顔をしながら土下座をしている父親と正妻を見下ろす。

「はい、結納金だけではやっていけそうにありません。大事な娘を差し出す事になるのならぜひ、援助を……」
「これまでお前達が桜子さんを大事にしてきた事はあったか?」

 何も言い返せないでいる2人。ここで嘘をつけば更に追及されると理解しているのかもしれない。

「お前達は我が最愛の妻をないがしろにした事は知っている。そんな者へ援助は出来んな」
「なっ……! この通りでございます! 今後桜子は大事に大事に扱いますのでどうか!」
「お父様!」

 ここでふすまが開かれて真千子が姿を現した。どうやらふすまの奥にある小部屋で聞いていたみたい。

「お父様、お姉様も一緒に私も百々家へと連れて行ってくださいまし!」
「まっ真千子?! ど、どういう事だ?!」

 慌てふためく2人。もちろん真千子が言っている事は私も理解できない。私も百々家へ行きたいってどういう事?
 女中として働くという意味ではなさそうなのは確かだけど……。

「待て。君はどうしてうちに来たいと言っているんだ?」

 裕一郎様の問いに真千子は目をきゅるんと潤ませながら彼へと近づく。そして裕一郎様の腕をぎゅっと掴んだ。