ここでもし、私が裕一郎様からは離れて、また2人での暮らしを続けたら彼女達は幸せになるのだろうか? 私はその思いを吐き出してみる。

「そりゃあ当然よ! 私の両親も喜ぶし、実家も安泰だわ!」
「私、ずっとあの方をお慕いしていたの! 私の恋が実るなんてこれ以上の幸せはあると思う?!」
「ちょっと! 私も裕一郎様の事を幼い頃からお慕い申し上げていたのよ?!」
「裕一郎様が男爵家の妾腹な人間とご結婚するだなんて、とてもじゃないけど許せないわよ!」

 そっか。やっぱり私なんかよりも彼女達の方が良いんだ。そうだよね。私と裕一郎様は不釣り合い。それは理解できていたはずなのに。
 いつの間にか私の両眼からはぼとぼとと涙が零れ落ちていた。彼女達はそれでも私と裕一郎様が結婚するのはいけない事だという力説を止めない。
 もうやめてよ。もう裕一郎様との幸せなんか望まないから……。

「……わかりました、私は裕一郎様の事を諦めます……」
「俺は諦めるつもりはないけどな?」

 はっと後ろを振り向くと、白煙と共に裕一郎様が姿を現した。私以上に令嬢達が鯉のように口をぱくぱくさせながら驚いている。