狼のような耳を生やしたあやかしの令嬢が、裕一郎様の左腕に抱き着いた。ドレス越しとはいえ胸を押し付けているような姿に私は嫌悪感を覚える。

「ね、いいでしょう?」
「……わかった……」

 私は彼女達に手を掴まれてどこかへと連れていかれる。振りほどこうにも身体が固まってしまって動けない。これが彼女達の神通力なのか、それとも違うのかもわからない状態だ。
 会場から離れた歓談室なる小部屋へと連れていかれた私に、彼女達が目を大きく見開きながら迫って来る。

「あなた。一之瀬男爵家の人間の令嬢よね?」

 妾腹ではあるけどそれはその通り。なので私ははい。と答える。

「どうしてあの人と知り合ったの?」
「パーティーで巡り合えた訳?」
「あなた、どうやってあの方に潜りこめたのかしら。手口を教えてくださらない?」
「……手口?」

 どう考えても彼女達の迫力に負けているのに、眉間だけはしわを寄せる事に成功したみたい。すると彼女達はかっと口を大きく開いた。

「あなたみたいな女がどうやってあの方の心を奪ったのかって聞いてるのよ!」