「どうです? とても美しく仕上がっておりますが」

 女中さんから赤い手鏡を手渡された私は、鏡に映る自分の姿に思わず声を出してしまった。赤い豪華な着物がこんなに綺麗になってるだなんてすごい……!

「ありがとうございます……! とても良い感じです!」
「お気に召して頂き何よりでございます。今日は晴れ舞台。頑張ってきてくださいね」
「はい……!」

 女中さん達かた励ましの言葉を頂くと、気合が入る。
 会場は開業したばかりのホテルで、真之は女中さん達と共に屋敷に留まる予定だ。

「桜子さん……!」

 屋敷ね玄関で、紋付袴姿の裕一郎様と落ち合う。袴から出た九尾の尻尾がゆらゆらと機嫌よさそうに揺れていた。

「お待たせしました。裕一郎様」
「よく似合っているよ。ずっと眺めていたいくらいだ」
「ずっと……ですか」

 彼の囁きに顔を赤くしているのは、私だけでないみたい。

「ご当主様……!」
「仲睦まじそうで何よりですわ」

 女中さん達が黄色い声を出しているのに気がついた裕一郎様が咳払いすると、彼女達は慌てて口を閉ざした。