「喜び……喜んでいいって事ですか」
「そう」
「や、やったぁ! ……こうですか?」

 ちらりと裕一郎様を見ると、彼はくすりと目を細めて笑った。そして真之も笑っている。もしかして会話の意味をしっかり理解してる?

「可愛いな、桜子さん」
「か、可愛い……ですか……」

 そう言われると顔が火照ってきた。まるで茹で上がったお湯の湯気に当てられてるみたい、

「君の可愛い所も俺は好きだ」
「あ、ありがとう……ございます……」

 恥ずかしさに似たようで違うような感情を押し殺しながら私はあさってのお披露目の会について説明を聞く。
 貴族達がたくさん訪れるそうだが……はてさて、どのような会になるだろうか。

「桜子さん。一之瀬家は……どうする?」
「あ……」

 そっか。貴族達へお披露目という事は実家も関わる可能性があるって事か。
 正直彼らとは会いたくない……。

「会いたくないみたいだね」

 裕一郎様にはお見通しだったみたい。私は胸の内を余す事なく打ち明けると、彼はわかった。とだけ告げた。

◇ ◇ ◇

 当日の朝。私は朝食を頂いてから女中さん達の手を借りて豪華な着物へと着付けをしてもらいつつ、髪結いとお化粧を施されていく。