裕一郎様に長い事抱いていた疑問を投げかけてみると、彼はそういえば……。と何か思い当たるような反応を見せる。

「百々公爵家は男が生まれると大体九尾の妖狐である事が多い気がする。そして女は逆に人間であるような……」
「やっぱりそういうのってあるんですか？」
「ああ。俺の母親も人間だ。だが俺を生んですぐに亡くなってしまったがな……」

　人間の女性が人間ではなくあやかしを生むというのは、人間を生むよりも死ぬ確率が高いと聞いた。理由は子の持つ神通力が母親の胎内から身体へと負荷をかけるからだとか。
　そしてそれはあやかしが上位であればある程確率が上がるのだと言う。

「ああ、だからあの時驚かれていたんですか？」

　真千子に襲われていた私を裕一郎様が助けてくれた時。真之を見た彼は驚いていたのを思い出した。まさか母子無事に暮らしているとは思ってもみなかったのかな。

「ああ。そしてあの時改めて確信した。君は俺にとって運命の人だって」
「運命の、人……」
「だから俺は君と真之君を愛し、守り抜いて見せる」

　彼の目を見ているだけで、ああ、この人とずっと添い遂げたいって思ってしまう。それくらい説得力があるように見えた。