「すみませ――ん! きつねうどんの中ください!」
「はいっ! お隣の方はいかがなさいます?」
「えっと私は……野菜うどんの小ください。私達のお代はよねちゃんが払いますんで」
「って事でこれで!」

 過不足無く代金を受け取り、うどんとお箸を渡す。周りはいつの間にか笑顔を浮かべながらうどんをすする女工さんの姿であふれかえっていた。
 あちこちから美味しいという声が聞こえて来ると、私のやる気が更にみなぎる。

「あちらがご当主様がおっしゃった桜子さんですかぁ。繁盛しているようですね」
「そうです。桜子さん。どうも」

 ここで黒いスーツ姿にハットを被った裕一郎様が、同じくスーツを身に纏ったあやかしの男達4人を従えてきた。女工さん達は一斉に居住まいを正してお疲れ様でございます! と裕一郎様に挨拶をしたので、私も慌ててそれに倣う。

「皆休憩中にごめんね。俺達もうどん、頂けるかな?」

 裕一郎様の後ろではあやかしの男達が物珍しそうに私の屋台を見ていた。皆尻尾があるから妖狐のあやかしのように見えるけど……もしかして屋台を見た事が無いのかな?

「かしこまりました。種類はいかがなさいますか?」
「えっと……きつねうどんが5。どれも量は中でお願い」
「承りました」