数多の女中さんや使用人の方々から出迎えられた私は、真之と共に自室となる北側の区画へ案内された。外観は裕一郎様がおっしゃっていたように平安時代の寝殿造風だけど、内装は和洋折衷と言った具合。

「あの、ここは趣が違うんですね」

 北側の区画の東側には白い小さな洋館があったので、渡り廊下を通って中に入ってみる事にする。女中の腕に抱かれている真之も興味津々なようで、あちこちに手を伸ばしている姿がほほえましい。

「ここは最近完成したばかりの洋館でね。ちょっとした遊びみたいなものと思ってくれればいいかな」
「遊び、ですか……」
「季節の木々や空を見ながらお茶会を楽しむとか、ね」

 貴族……特に財力に優れた上流貴族達にとって洋風のお茶会を楽しむ事はままある事だ。個人的には野点などの古風な茶会もいいけど、洋風のお茶会は一言で言うと憧れのようなものがある。
 そういえば外国にもあやかしはいらっしゃるのだろうか? いたら見てみたいものだ。

「ここは君が住まう区画。自由に使ってくれて良いよ。それこそ真之君の遊び場になんかもってこいだろう」
「あ、ありがとうございます……でも恐れ多い気が……」

 ただでさえ私達の居住区画は広いのに、こんな洋館まで好きにしていいだなんて……。