「っ……! ゆ、裕一郎様っ……!」

 私は涙が止まるまで真之と彼の側で泣いた。
 この方に出会えて本当に良かったと心から強く感じる。

「桜子さんと真之君は、俺が幸せにしてみせる」
「本当ですか……?」
「ああ、勿論。必ず」

 裕一郎様の言葉には、何かしらの力が篭っているようにも感じる。言霊というものなのかな?
 
「改めて。俺と結婚してくださいますか?」

 裕一郎様はひざまずくと真之を左腕で優しく抱き、右腕を私に差し出した。私は迷いや怖さを跳ね除けるようにしてゆっくりと彼の手を取る。綺麗で温かな手が心地よい。

「では、決まりだね。桜子さん、真之君。これからもどうぞよろしく」
「よろしくお願いします。裕一郎様」

◇ ◇ ◇

 裕一郎様の求婚を受け入れた私は、真之と共に慣れ親しんだ長屋から百々公爵家の屋敷へと移り住む事になった。

「わ、あ……すごく大きいお屋敷……」

 三大公爵家というだけあって、百々公爵家のお屋敷はとても広い。裕一郎様曰く、寝殿造を元に建築されているそうだ。