やはり百々公爵家。神通力はすごく高いのだろう。指を鳴らすだけでこんな事が出来るなんてちょっとうらやましいなと思ったり。

「では早速だけど、俺は君を百々公爵家に迎え入れたいと思っている」
「えっ、え?!」

 い、いきなりその話?! 迎え入れたいという事はすなわち結婚の事……?

「どうやら信じきれないような顔をしているね」
「は、はい……急に結婚と言われましても……」
「でも俺は君と結婚したくてずっと探していたんだ。新聞にそういう広告を載せたりしてね」

 あの人探しは私の事だったのか。ちょっとだけ嬉しい感情が胸の中から湧いて出て来る。

「ようやく君と真之君と出会えてほっとしている。これからは俺の妻として一緒に暮らしてほしい」

裕一郎様は真之を抱っこしながら、私へと真っすぐな目を向けて来る。逸らそうとしても見つめてしまうのは彼の神通力のせいなのか、それとも違うのかまでは分からない。

「あの、私は……うどん屋の屋台がありますし……」
「確かにそうだね。君はうどん屋の屋台を営んでいる」
「それに……この事を実家が知れば大変な事になってしまいます。あとは私が百々公爵家にちゃんと迎え入れられるかも心配で……」

 本音を言うとうどん屋の屋台はやめたくない。お客さんとの語らいとか、お客さんの笑顔とか、うどん作りとかとっても楽しいしやりがいがある。