「そこで待っているから。じゃあね」
「はい、お手数をおかけしてしまいすみませんでした……」
「謝らなくて良いよ。……ああ、邪魔なものを片付けるのを忘れていたね」

 裕一郎様が右手の人差し指をくいっと動かすと、真千子の身体が宙に浮いて馬車の中に収まった。彼女の固まった身体はどう見ても人形のようだ。
 
「こいつは実家に送り返しておくよ。君のせいじゃないから安心して」
「っはい……」
「では、また」

 馬車に乗って去っていく裕一郎様を真之を抱いて見ていた私。彼と会えたのはとっても嬉しい。けど、頭の中がまだ夢うつつって感じが残ってて営業に支障が出そうかも……。

「だあ」

 私の顔に手を伸ばす真之を見て、よし。と小さい声で気合を入れる。ちょうど雪女のおばあさんが抱っこするのかわろうか? と声をかけてくれたので彼女に交代する事にした。

「とりあえずは……解決したみたいだねえ」
「そ、そうですね……」

 でも、また真千子がこの長屋にやって来る可能性もある。裕一郎様と再会できた喜びと、これからどうしようかという悩みを抱えたまま私は屋台の営業を続けたのだった。