「何をしているんだ?」
彼が声を発した瞬間、気が付いた真千子が彼の方へと振り向いた。
「あ」
という声を最後に真千子は石のように固まって動けなくなった。運よく彼女の身体が固まる前に私から手を放してくれたおかげで私はすんなりと逃れ出る事が出来る。
わああわああと泣きわめく真之をおばあさんの手から抱きあげてよしよし……。とあやしつつ、彼の方を見た。
「……あなたが一之瀬桜子さん。そして……そうか……そんな事があるのか……!」
「どうしました?」
「君と俺の子供だな。ずっと探していたんだ」
彼の厳しさと驚きを見せていた赤い瞳がふっと柔らかいものへと変わる。ああ、こうして近くで見てもあの時とは全く変わっていない。
「……あの、あの時の方ですよね。うどんを食べに来られて……」
「そうだ。そして宿で君と一夜を過ごした。真之君と言ったか」
「はい。この子は真之と申します」
「彼はその時の子供だろう。その九尾は間違いない」
彼の九尾の色は真之の九尾と全く同じ。どこからどう見ても彼の血を引いている事は疑う余地も無かった。
でも、彼の名前はなんていうのだろう? 三大公爵家のどれかなのはわかり切っているけど……私を馬車に乗せていこうとする彼へと聞いてみなければ。
「あの、少々待ってください。あなたのお名前を聞くのを忘れていて……」
「俺は百々裕一郎。百々公爵家の当主だ」
彼が声を発した瞬間、気が付いた真千子が彼の方へと振り向いた。
「あ」
という声を最後に真千子は石のように固まって動けなくなった。運よく彼女の身体が固まる前に私から手を放してくれたおかげで私はすんなりと逃れ出る事が出来る。
わああわああと泣きわめく真之をおばあさんの手から抱きあげてよしよし……。とあやしつつ、彼の方を見た。
「……あなたが一之瀬桜子さん。そして……そうか……そんな事があるのか……!」
「どうしました?」
「君と俺の子供だな。ずっと探していたんだ」
彼の厳しさと驚きを見せていた赤い瞳がふっと柔らかいものへと変わる。ああ、こうして近くで見てもあの時とは全く変わっていない。
「……あの、あの時の方ですよね。うどんを食べに来られて……」
「そうだ。そして宿で君と一夜を過ごした。真之君と言ったか」
「はい。この子は真之と申します」
「彼はその時の子供だろう。その九尾は間違いない」
彼の九尾の色は真之の九尾と全く同じ。どこからどう見ても彼の血を引いている事は疑う余地も無かった。
でも、彼の名前はなんていうのだろう? 三大公爵家のどれかなのはわかり切っているけど……私を馬車に乗せていこうとする彼へと聞いてみなければ。
「あの、少々待ってください。あなたのお名前を聞くのを忘れていて……」
「俺は百々裕一郎。百々公爵家の当主だ」