小学校を卒業後も私はレールの上を辿った。母の考えた未来予想図の通り、都内で最も偏差値の高い私立中学へと無事に進学を果たした。それでも安心感を抱くことはなく、寧ろ恐怖と焦燥に狩られ続けていた。
授業中は内容を頭に叩き込むことが精一杯で、話かける余裕がなかったし、周りの生徒達は終鈴が鳴り止んでもノートと教科書から目を逸らさない。誰かに追い越される未来を想像してしまい、それが途轍もなく怖かった。私の理想とする中学生活には天と地ほどに掛け離れている。
休み時間になると両手の指先に残る、もう包帯を巻かれなくなった火傷の跡を眺める時間が私の唯一の癒しに変わった。
この場所でも私は完璧を演じなければならない。母からの家族愛を貰うには、弟の雨斗とは違い、私には何か捧げる代償が必要だから。
初めは何とかやり過ごせていると、誤魔化せているのだと感じでいた。けれどそれは初めだけだった。時が経てばどうしても化けの皮は剥がれていくもので、私の成績は少しずつだけれど下がっていった。
“大丈夫、大丈夫。多分まだ間に合う。どうにかすれば、まだ大丈夫だ”
明かりを消した部屋で、崩れかけのガラクタを炎で溶かし固めるように、盗んだライターを点火しながら深く呼吸をする。誰にも聴かれないよう小さく呟いたその言葉が、私が手頃に投薬できる丁度いい麻酔薬だった。
入学してから桜の花弁が、上に伸びた木々の枝よりよりも道端に多く訪れた期末テストの日、とうとう私の心は音を響かせながら壊れていった。
午前中に学校が終わり、帰路に着いた私の前を母に酷似した女性が喫茶店へ入るところを見かけてしまった。
今日も遅くなるからと、それだけ言って職場へ向かったはずの母がお昼前にこんな所にいるのが不思議に感じ、思わず追いかけてしまった。
外からバレないように店内の様子を伺うと、母のいる席には私の知らないスーツ姿の男性が座っていた。
授業中は内容を頭に叩き込むことが精一杯で、話かける余裕がなかったし、周りの生徒達は終鈴が鳴り止んでもノートと教科書から目を逸らさない。誰かに追い越される未来を想像してしまい、それが途轍もなく怖かった。私の理想とする中学生活には天と地ほどに掛け離れている。
休み時間になると両手の指先に残る、もう包帯を巻かれなくなった火傷の跡を眺める時間が私の唯一の癒しに変わった。
この場所でも私は完璧を演じなければならない。母からの家族愛を貰うには、弟の雨斗とは違い、私には何か捧げる代償が必要だから。
初めは何とかやり過ごせていると、誤魔化せているのだと感じでいた。けれどそれは初めだけだった。時が経てばどうしても化けの皮は剥がれていくもので、私の成績は少しずつだけれど下がっていった。
“大丈夫、大丈夫。多分まだ間に合う。どうにかすれば、まだ大丈夫だ”
明かりを消した部屋で、崩れかけのガラクタを炎で溶かし固めるように、盗んだライターを点火しながら深く呼吸をする。誰にも聴かれないよう小さく呟いたその言葉が、私が手頃に投薬できる丁度いい麻酔薬だった。
入学してから桜の花弁が、上に伸びた木々の枝よりよりも道端に多く訪れた期末テストの日、とうとう私の心は音を響かせながら壊れていった。
午前中に学校が終わり、帰路に着いた私の前を母に酷似した女性が喫茶店へ入るところを見かけてしまった。
今日も遅くなるからと、それだけ言って職場へ向かったはずの母がお昼前にこんな所にいるのが不思議に感じ、思わず追いかけてしまった。
外からバレないように店内の様子を伺うと、母のいる席には私の知らないスーツ姿の男性が座っていた。