「あれ。至くん、もしかしてお腹が減ってる?」
「ああ」
「分かった。精気をあげるからちょっと待って。今すぐ恭ちゃんのことを考えるから」
「いい。あの人のことは考えなくて」
「えっ? ああ、夢の中じゃ精気はあげられないのかな?」
「精気はいいから。俺の目を見ろ」
至くんに腕を引かれ、至近距離で彼の顔を覗き込む格好になる。
形のよい切れ長の目の中で輝く金色は、まるでディスプレイされた宝石のように眩い光を放っていた。
「その目、最初に見たときは少し怖いと思ったけど、本当はとても綺麗な色なんだね」
「こんな気味の悪い目を綺麗だなんて言うのはあんたくらいだ」
「そんなことないのに」
私はたぶんいつの間にか、至くんの金色の目を見るのが好きになっていたのだろう。
夢魔の欲望を人間の理性で押さえつけながらも、やはり本能的に精気を求めてしまう目。
きっと至くんは苦しくてたまらないはずなのに、彼が苦しむ分だけ、その目は切なく、色っぽくなるのだ。
そんな彼の目を見て満たされる私は、やっぱり悪魔なのではないかと思ってしまう。
今日もまたその金色に見惚れていると、至くんは少し怒ったように目を細めた。
「あんた、本当に変な女だよな。お人好しで能天気なのかと思えば妙に肝が据わってて、いつもへらへら笑ってるくせにあの人のことにだけ涙を流す」
至くんはそう言うと、今度は私の両肩を掴み、私を真っ白な床へと押し倒した。
突然の行為に驚いていると、彼の右手が私の頬に触れ、そのまま首筋から鎖骨へと下降していく。
指先が皮膚の薄い部分に触れ、私の感覚はすべてそこに集中した。
こそばゆくて、なんだか甘い刺激が走る。
いったい突然どうしたのだろう。
これではまるで、恋人同士が触れ合っているようだ。
「あの、至くん……」
「何?」
「いや、その、ちょっと手つきが……なんと言うか……」
「いかがわしい?」
「う、うん」
言いづらかったことをピタリと当てられて言葉を失う。
どうやら至くんは意図して性的に私に触れているらしい。
「俺に触られるのは嫌か?」
「嫌じゃないよ? 精気をあげるときだっていつも背中を触られてるし」
「ならいいだろ」
「でも、今日のはなんか恥ずかしいよ」
羞恥に耐えられずそっぽを向くと、頭上で至くんが笑った気配がした。
「夢魔が精気を貪る行為は、人間側も気持ちが伴えば快楽を得られる。嫌じゃないなら頭を空っぽにして浸っていたらいい。悪いようにはしない」
耳元で囁かれ、心臓が跳ねる。
確かに至くんに触られるのは嫌ではないし、むしろいつも心地いいと思っているけれど。
「いやっ、でも、その、あのっ……!」
さすがにこれは一線を越えているのでは。
そう思い、声にならないような声を出しながら狼狽えていると、金色の目に顔を覗かれた。
きっと真っ赤に染まっているであろう私の顔を見て、その目がニヤリと細められる。
「ああ」
「分かった。精気をあげるからちょっと待って。今すぐ恭ちゃんのことを考えるから」
「いい。あの人のことは考えなくて」
「えっ? ああ、夢の中じゃ精気はあげられないのかな?」
「精気はいいから。俺の目を見ろ」
至くんに腕を引かれ、至近距離で彼の顔を覗き込む格好になる。
形のよい切れ長の目の中で輝く金色は、まるでディスプレイされた宝石のように眩い光を放っていた。
「その目、最初に見たときは少し怖いと思ったけど、本当はとても綺麗な色なんだね」
「こんな気味の悪い目を綺麗だなんて言うのはあんたくらいだ」
「そんなことないのに」
私はたぶんいつの間にか、至くんの金色の目を見るのが好きになっていたのだろう。
夢魔の欲望を人間の理性で押さえつけながらも、やはり本能的に精気を求めてしまう目。
きっと至くんは苦しくてたまらないはずなのに、彼が苦しむ分だけ、その目は切なく、色っぽくなるのだ。
そんな彼の目を見て満たされる私は、やっぱり悪魔なのではないかと思ってしまう。
今日もまたその金色に見惚れていると、至くんは少し怒ったように目を細めた。
「あんた、本当に変な女だよな。お人好しで能天気なのかと思えば妙に肝が据わってて、いつもへらへら笑ってるくせにあの人のことにだけ涙を流す」
至くんはそう言うと、今度は私の両肩を掴み、私を真っ白な床へと押し倒した。
突然の行為に驚いていると、彼の右手が私の頬に触れ、そのまま首筋から鎖骨へと下降していく。
指先が皮膚の薄い部分に触れ、私の感覚はすべてそこに集中した。
こそばゆくて、なんだか甘い刺激が走る。
いったい突然どうしたのだろう。
これではまるで、恋人同士が触れ合っているようだ。
「あの、至くん……」
「何?」
「いや、その、ちょっと手つきが……なんと言うか……」
「いかがわしい?」
「う、うん」
言いづらかったことをピタリと当てられて言葉を失う。
どうやら至くんは意図して性的に私に触れているらしい。
「俺に触られるのは嫌か?」
「嫌じゃないよ? 精気をあげるときだっていつも背中を触られてるし」
「ならいいだろ」
「でも、今日のはなんか恥ずかしいよ」
羞恥に耐えられずそっぽを向くと、頭上で至くんが笑った気配がした。
「夢魔が精気を貪る行為は、人間側も気持ちが伴えば快楽を得られる。嫌じゃないなら頭を空っぽにして浸っていたらいい。悪いようにはしない」
耳元で囁かれ、心臓が跳ねる。
確かに至くんに触られるのは嫌ではないし、むしろいつも心地いいと思っているけれど。
「いやっ、でも、その、あのっ……!」
さすがにこれは一線を越えているのでは。
そう思い、声にならないような声を出しながら狼狽えていると、金色の目に顔を覗かれた。
きっと真っ赤に染まっているであろう私の顔を見て、その目がニヤリと細められる。