2年生になると至くんはもちろん、亜季ちゃんともクラスが離れてしまった私の周りは、以前よりも少しだけ静かになってしまった。
とはいえ新しく同じクラスになって仲よくなった子もいたりして、それはそれで楽しく平穏な日々を過ごしている。
しかしそんな私とは対照的に、至くんの周囲はなんだか騒がしいようだった。
「至くん、また告白されたんだってね」
「……なんでそんなこと知ってるんだよ」
「噂になってるもん。至くんがかわいくて有名な1年生から告白されたって」
私の精気を摂取してからというもの、依然としてモテ期が止まらない至くんは、新年度からまだ1ヶ月が経っていないというのに、なんと5人もの1年生から告白をされたらしい。
中でも昨日告白した子は地元誌の読者モデルをやっているという美人で、しかも性格もよく、気さくで優しいのだという。
噂によると、至くんはそんな素敵な子をにべもなく振ってしまったそうだ。
「すごくいい子だっていう話なのにもったいないなぁ。ねぇ、誰かと付き合ってみようかなって思ったことないの?」
「興味ねぇ」
興味津々で聞く私を尻目に見ながら、至くんが鬱陶しそうに一刀両断する。
そのままムスッと口を閉ざしてしまったので、私はそれ以上、彼にその手の話を振ることはできなくなってしまった。
おそらく至くんはまったく恋愛に興味のない人なのだろう。
そもそも恋愛に興味があれば私のような平凡な人間ではなく、もっと彼に似合う綺麗な人を誘惑して精気をもらっていたはずだ。
つまり至くんが恋愛に興味がないおかげで、私は彼と仲よくなることができたというわけだった。
なんとも言えないような申し訳なさと、現金にも嬉しく思ってしまう気持ちを認めながら、至くんの整った横顔を眺める。
それならまだもう少し、彼の一番近くにいさせてほしい。
いつか彼に大切な人ができるその日まで。
「じゃあそろそろ帰るね」
本日の精気の受け渡しも無事に終えていそいそと身支度をしていると、そんな私を見た至くんが無表情のまま立ち上がった。
「送ってく」
「まだ明るいから大丈夫だよ?」
「それでも送る」
「うん。ありがと」
季節は初夏に差しかかっている。
日も長くなったからまだ外は明るいというのに、至くんは毎回律儀に私を送ってくれるのだ。
彼の厚意に甘え、並んで歩きながらマンションを出る。
そしていつも通り駅へと向かっていると。
「結花?」
最寄駅の手前で、ふいに名前を呼ばれた。
「恭ちゃん!」
声のした方へ振り向けば、そこにはよく見知った人物が立っていた。
それは私の叔父――松嶋恭太だった。
私の姿を見つけて駆け寄ってきた恭ちゃんは、しかし隣に至くんがいたことに気づいたのか、とたんにバツの悪そうな顔をした。
「悪い。人と一緒だったんだな。もしかして彼氏か?」
「うん、そうだよ。この人は彼氏の我妻至くん」
恭ちゃんの間違いを訂正することなく頷き、おそるおそる至くんを見上げる。
彼氏と偽ったことに腹を立てるかと思ったものの、なぜか彼は気にした素振りもなく恭ちゃんに会釈をした。
とはいえ新しく同じクラスになって仲よくなった子もいたりして、それはそれで楽しく平穏な日々を過ごしている。
しかしそんな私とは対照的に、至くんの周囲はなんだか騒がしいようだった。
「至くん、また告白されたんだってね」
「……なんでそんなこと知ってるんだよ」
「噂になってるもん。至くんがかわいくて有名な1年生から告白されたって」
私の精気を摂取してからというもの、依然としてモテ期が止まらない至くんは、新年度からまだ1ヶ月が経っていないというのに、なんと5人もの1年生から告白をされたらしい。
中でも昨日告白した子は地元誌の読者モデルをやっているという美人で、しかも性格もよく、気さくで優しいのだという。
噂によると、至くんはそんな素敵な子をにべもなく振ってしまったそうだ。
「すごくいい子だっていう話なのにもったいないなぁ。ねぇ、誰かと付き合ってみようかなって思ったことないの?」
「興味ねぇ」
興味津々で聞く私を尻目に見ながら、至くんが鬱陶しそうに一刀両断する。
そのままムスッと口を閉ざしてしまったので、私はそれ以上、彼にその手の話を振ることはできなくなってしまった。
おそらく至くんはまったく恋愛に興味のない人なのだろう。
そもそも恋愛に興味があれば私のような平凡な人間ではなく、もっと彼に似合う綺麗な人を誘惑して精気をもらっていたはずだ。
つまり至くんが恋愛に興味がないおかげで、私は彼と仲よくなることができたというわけだった。
なんとも言えないような申し訳なさと、現金にも嬉しく思ってしまう気持ちを認めながら、至くんの整った横顔を眺める。
それならまだもう少し、彼の一番近くにいさせてほしい。
いつか彼に大切な人ができるその日まで。
「じゃあそろそろ帰るね」
本日の精気の受け渡しも無事に終えていそいそと身支度をしていると、そんな私を見た至くんが無表情のまま立ち上がった。
「送ってく」
「まだ明るいから大丈夫だよ?」
「それでも送る」
「うん。ありがと」
季節は初夏に差しかかっている。
日も長くなったからまだ外は明るいというのに、至くんは毎回律儀に私を送ってくれるのだ。
彼の厚意に甘え、並んで歩きながらマンションを出る。
そしていつも通り駅へと向かっていると。
「結花?」
最寄駅の手前で、ふいに名前を呼ばれた。
「恭ちゃん!」
声のした方へ振り向けば、そこにはよく見知った人物が立っていた。
それは私の叔父――松嶋恭太だった。
私の姿を見つけて駆け寄ってきた恭ちゃんは、しかし隣に至くんがいたことに気づいたのか、とたんにバツの悪そうな顔をした。
「悪い。人と一緒だったんだな。もしかして彼氏か?」
「うん、そうだよ。この人は彼氏の我妻至くん」
恭ちゃんの間違いを訂正することなく頷き、おそるおそる至くんを見上げる。
彼氏と偽ったことに腹を立てるかと思ったものの、なぜか彼は気にした素振りもなく恭ちゃんに会釈をした。