授業中だからなのか、廊下には俺たちの会話と足音だけが響いている。

「そうだね」

「あれ?なんか思った反応が少し違うな」

「希望する反応ができなくて悪かったね?」

「うわぁ、嫌味が嫌味が物凄く込められてる」

花巻と話していると何を言えばいいか考えずに口からスラスラと言葉が出てくる。

「なんだ、やっぱり君は君だ」

誰かと重ねているような目で見てくる。

何か、懐かしむようなそんな顔で見てくる。

「昔、あったことあったけ?」

昔に会ったからそんな顔をするんだと思った。

「違うよ」

そんな考えもすぐさま消される。でも、彼女とはしゃべったこともない相手なはずだ。

「まあ、取り合え遅刻しまくっている我らの担任を呼びましょうか」

何かを楽しむような顔で笑いかけてくる。何が面白いのだろう。

ただ、先生が遅刻したってだけで。楽しい要素はどこにもないと思う。

「失礼しまーす。先生を連れていくためにきましたー」

花巻が、そう言って職員室のドアを開ける。