小さい頃から写真を撮るのが大好きだった僕は、大学に入学すると迷わず写真部へ。

そこで出会ったふたつ年上の先輩、新木 柊先輩に僕は憧れた。写真の技術が優れているのはもちろん、分からないことを丁寧に教えてくれたり「そらくん、きちんとご飯食べてる?」なんて、一人暮らしを始めた僕のプライベートまで気にかけてくれて。

 内気な僕だから、先輩の存在はすぐに偉大な存在になり、憧れを抱いていた。写真だけが共通点なのかと思っていたのだけど、ある冬の日、ふたりで雪の風景写真を撮りに行った時だった。

撮りに行った場所は水の色が綺麗と有名な池。そこで池と雪が合わさった風景を撮った。綺麗な写真が無事に撮れて、満足して近くのカフェへ入る。

僕は甘いものが大好きで、ケーキの辺りばかり見ていた。「コーヒーと、他に何か頼もうかな……」とメニューを眺めている先輩は何を頼むのだろうとチラチラしながら、自分もメニューを眺めて、迷っていた。先輩はいつも部室でコーヒーを飲む時は、甘いものが好きな僕のように砂糖を使わないし、甘いのがあんまり好きではなさそうだなと思っていた。

けれど「俺、このチョコケーキにする」と。
「先輩、甘いもの苦手じゃないんですか?」
「えっ、何で? 大好きだよ」
「だって、いつもコーヒー飲む時ブラックだから」
「それね、写真いじってる時だけだよ! 気合い入れて集中するため」と言いふふっと笑った。

先輩も甘いものが大好き――。

写真以外に共通点をみつけて、胸の中に温かいものが流れ、笑みが止まらない。
「そんなに笑顔で、どうしたの?」
「あの、僕も甘いものが大好きで先輩と共通点みつけたなって、嬉しくなって」
「そらくんも大好きなんだ? じゃあさ、たくさん頼んでケーキパーティーしちゃおうか」

チョコ、いちごケーキ、ミルフィーユ……ソフトクリームまで。

たくさんテーブルに甘いものが並んだ。

憧れの先輩と、大好きな甘いもの。これは写真に収めるしかない。

「先輩、写真撮って良いですか?」
「いいよ! フォーク持って自然な感じにポーズ決めるね!」

ファインダー越しの先輩は実物と変わらず格好よく、ケーキも美味しそうで、窓からの自然光も綺麗。

最高のシチュエーション。

幸福感のようなものが溢れてきて、まだケーキを食べていないのに胸辺りやお腹がいっぱいになる。僕は何回も深呼吸をした。

 先輩がこっちを見て微笑んだ。もう、嬉しい、幸せ。

――先輩、大好き。