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 ルナが慌ただしく歩き回る姿を見ながら、リビングのソファに体を沈め込む。
 私がサボってることに気づいたのか、いつのまにか私の真上からルナが覗き込んでいた。
 つい、驚きで、変な声が出てしまう。

「うわぁ」
「また、サボって」
「だって疲れたんだもーん、サイダーでも飲もうよぉ」

 甘えたように声を出せば、ルナは「はいはいあとでね」と答えながらも、私の手を引く。
 無理矢理に立たされたかと思えば、ルナが使っていた掃除機を握らされた。

「じゃあ、掃除よろしく」
「えー」
「買い出し行ってくれてもいいけど」
「私免許持ってないから、歩きじゃん!」

 行きつけのスーパーは近いとは言え、歩けば二十分くらい掛かってしまう。
 片道で、だ。
 ルナは免許を持っているから、ぴょいっといってすぐだけど。

「だから、免許とりなよっていったじゃん。公共交通機関が発達してる場所じゃないから無いと大変だって言ったでしょ」
「そーだけどー」
「はい、じゃあ掃除よろしく」

 ぱしんっと私の背中を叩いて、ルナは車の鍵をくるくると回して出ていく。
 仕方なく掃除機をかけながら、ふぅとため息を吐いた。
 ジーンズのお尻のポケットから、スマホを取り出してお気に入りの曲を大音量で掛ける。

 歌を口ずさみながら、掃除機を動かす。
 ルナは私とは正反対で、神経質だと思う。
 それを指摘すれば、「アカリが雑なだけ」って言われるけど。
 まぁ、自分の部屋は汚い自覚はある。
 片付けよう片付けようと思うたびに、懐かしいノートとか、色んなものに心惹かれて進まないからしょうがない。